第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「もうお昼ご飯買ったりした?」
『あ、ううん。これから買いに行くとこ』
「お、セーフ!
これ母さんが作ったやつだけど!」
俺のとおなじ包みに入った弁当。
『え!いいの!嬉しいいい!』
「あーえと、一緒に食べない?」
『うん、食べようっ!』
お揃いの弁当を持って屋上へと上がる。
『わあ…屋上でお弁当とか漫画みたーい!』
「天気いいし、たまには俺とここで食べよ?」
学年が違うから校舎内で会うこともほとんどない。
こうやって自分から会いにこないと会えないから。部活だけなんて寂しいだろ?皆いるし2人きりの時間じゃないからな。
『うん、こういうの憧れてたっ』
「そー?なら良かったよ」
2人並んで座って青空の下同じ弁当を食べる。
なんか…の好きなもんばっかだな。
『ねえ孝ちゃん、私の好きなものしかない!』
「それ俺も思ってた」
『ふは、孝ちゃんママってば私に甘いなあ』
どーせ今日の夕飯もの好きなもんだな
母さんのことホントの娘みたいに
可愛がってるもんな。仲良いし。
幸せそうに笑ってご飯を頬張る姿が可愛い。
「…口にマヨ付いてるよ」
『うそ、どこ?』
どこ?って何度か指で口周りを触っているけど見つからないみたい。だから昔してたみたいに頬を片手で包んで親指でキュッと拭った。
そう。昔してたみたいに、だ。
なのに
『や…めてっ!』
ドンって俺を突き返した。
「え……?」
綺麗な瞳がうっすら濡れて揺れてる。
手が震えていて怯えた表情。
今日の朝みたいに。
たしかに少し顔が近かったかもしれない。
けどそんなの慣れっこ…だよな?
『…っはあ…はあ…っ』
浅い呼吸を繰り返して青くなるにどうしたらいいのか分からなかった。
「…?東京でなんかあった?」
思い当たることなんてそれしかない。
こっちにいたときは普通だった。
どんな距離にいても俺を受け入れてくれてた。
こんなに怯えられたこと…ないよ…。