第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
『こ、孝ちゃん!孝ちゃん!!』
「どうした!」
俺の家の風呂場から聞こえる声。
次会えんのはいつだろうかって
毎日毎日考えてた。
その人が今俺の家にいる。
声の聞こえた風呂場までやってきて
ドアの前で1度止まる。
「?あけるぞ?」
『ま、まって!』
「あ…っ」
返事を聞く前に開けてしまった。
なんというラッキースケベ…ではなく!
「ご、ごめん!!」
急いで閉めるけどもう遅い。
今度はあちら側からゆっくり開くドア。
『孝ちゃんごめん…あのさ。』
下着は着てるから、と軽くバスタオルを体に巻き付けたが顔を出す。どうやら着替えがないらしい。母さんからいつも置きっぱにしていた下着だけを受け取って風呂にはいったのだろう。パジャマはいつも俺の部屋着をテキトーにきていたから。
「あ、そうだよね持ってくる!」
ダッシュで部屋に戻って適当に引っ張り出したスウェットを手に戻る。
『はわぁ…ありがと孝ちゃんっ』
スウェットを受け取ったが着替えて俺の部屋に帰ってきた。一緒に…寝るのか。
「…あれ。俺ズボン渡したよね?」
目の前には俺のトレーナーをワンピースみたく着ている。にしても短ぇんだよな。
『あ、の。これ紐ついてなくて…緩くて。
でも平気!トレーナー大きかったし!』
そう言ってちょこんと俺の隣に腰をおろす。
白い脚が見えてんだよバカ…
「あ、おれ風呂!いってきマス…っ」
なんかヤバそうだから逃げるように風呂へと向かう。頭から熱いシャワーを浴びてみるけど雑念が消えてくれない。しっかりと反応してしまった息子に呆れる。
「…俺大丈夫かよ…っ」
湯船に浸かって今日の出来事を思い出す。
俺はいつも通り部活に向かった。
体育館のトビラを開けるまでは何も変わらない今日だったんだ。だけどトビラを開けたら…君がいた。ブワッて風が吹いたみたいに心がザワザワって…ドクドクってなった。