第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
お母さんたちも本当は宮城に帰ってくるはずだったんだけど急遽東京での大きい仕事が入ったらしいお父さんを支えるためにお母さんも残ったの。もっと早くにその仕事が決まっていたら私も多分東京へ残ってた。けどその仕事が決まった時、私は既に烏野高校の合格を貰ってた。受験し直すわけにもいかないし、制服の採寸とかも終わってたから1人で戻ってきた。
もともと暮らしてた家だし
地元ってやつだから友達もいる
だから特別不安もなく戻ってきた。
「あれ…でも俺の母さんと出かけてたのは?」
『あー、あれはこっち戻って来た日に荷物とか多いしお母さんも3日くらいこっち居たの。そのときに孝ちゃんママと出かけてたよ』
「夜ごはん…っ」
『え?』
「うちに夜飯食いに来ないか?
帰ってもひとりなんだろ?
母さん喜ぶしうち来なよ」
『え、いいの!
孝ちゃんママのご飯だいすき!!』
「ん、じゃあいこうか」
『わーい!!』
昔からお母さんやお父さんの帰りが遅い時は孝ちゃんの家で夜ご飯を食べてた。ゲームをしながらお迎えを待ったり、そのまま泊まったり楽しかったなあ。
「ただいまー」
『お邪魔しマース』
「おかえ…ちゃんじゃない!」
『久しぶり!帰ってきたよ!』
「やだー、こんな綺麗になってもう…!
孝支のお嫁さんになってほしいわあ」
「ちょ、母さんっ」
『ははっ!なっちゃおうかな〜?』
私を本当の娘みたいに可愛がってくれる孝ちゃんママは会う度にうちの娘にしたいーって、孝支のお嫁さんなってーって言ってくれる。優しくて明るくて孝ちゃんによく似てる。料理もいつも美味しくて大好きなんだ。
今日は唐揚げだよって私がご飯を食べに来るのが当たり前みたいに晩御飯のメニューを教えてくれた。ドタバタと部屋に引っ込んでしまった孝ちゃんをよそに私は孝ちゃんママとご飯の準備をする。って言ってももう出来上がっているからコップやお箸を出すだけなんだけど。
「ちゃーん」
キッチンから私を呼ぶ声
『はーいっ』
「たぶん孝支部屋着に着替えたりしてると思うから呼んできてくれないかしら?あと私やっておくからお願いしてもいい?」
『はあいっ』
久しぶりにあがる孝ちゃんの家。
何度も訪れた部屋の前で一応ノックをする。