第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「その…騒がしくてごめんね?」
ただその光景を眺めている私に旭さんが声をかける。ワイルドな見た目に反して喋り方とか表情とか柔らかくて優しい人だ。
『あ、いえ!この感じ好きです。
皆さん仲がいいんだろうなって分かります』
「そっか、それなら良かった。
あーあのさ、ちゃんとスガって付き合ってた…りした?それか今彼氏いる?えと…東京!いたんだよね?」
『ふぇ…?あ、さっき清水さんにも言われました…けど!私と孝ちゃんはただの幼なじみですし彼氏もいません。』
「あ、そうなんだ。そっか…!」
「こーら旭ぃ!にちょっかいかけんなあ!可愛いだろ?可愛んだよは!おーれーのーだーぞー!」
『ちょ、ちょっと孝ちゃん!?』
「スガおこんなよぉ〜っ」
私が東京に行く前から孝ちゃんは私にベッタリなとこがあった。だけど人前でこんなにハッキリ態度に出したり言ったりしてるのはあんまり見た事がない。私が転んだら手を差し伸べてくれる。重いものを持っていたら持ってくれる。泣いていたら頭を撫でてくれる。泣き止むまでそばにいてくれる。いつだってそばに居てくれた孝ちゃん。優しくてカッコよくて…自慢の幼なじみ。
私が男の子と帰ってるのを見かけて走って追いかけてきた事もあったっけ。懐かしい。孝ちゃんといたら彼氏できないって喚いたなあ。それでいいじゃんっていつになく真剣な顔した孝ちゃんに少しドキってして。まあ何年も前の話なんだけど。
でもそれだけ。
恋愛的な意味の好きになることはなくて。
ただ孝ちゃんの隣は心地がいい。
2年ぶりに会う孝ちゃんは昔と変わらず明るくてほんわかしてて。一緒にいると温かい気持ちになる。
「…!」
『…はいっ』
「ぼーっとしてどうした?
俺ら練習戻るから流れ弾気をつけろよ?」
『はいっ』
うん。敬語使えてる。この調子!
「騒がしいけどみんな良い奴だから。
これから宜しくねちゃん」
『はい、お願いしますっ』
最後にポンっと私の頭をひと撫して
旭さんは練習へ戻っていった。
ビックリして一瞬ビクッとしてしまったのを
旭さんが申し訳な表情でみるから
大丈夫です!って笑顔で返した
私は優しい先輩相手に何を思い出してるの…。