第2章 兄と弟
私の日常は壊れてしまった。
学校でしない時は、灰谷兄弟の家にいるのが日課のようになっていた。
私に拒否権はないようで、拒んだところでどんな方法ででも連れ帰られてしまう。
「んっ、ほら……もっとしっかり腰動かせよ……」
「ゃ、あっ、む、りっ……」
灰谷蘭のベッドで、彼に跨ぐような体勢で挿入されている。
ここ最近、毎日のように体を重ねるようになり、私の体も彼を覚えきってしまっていた。
「教えてやったろーが……早くやれよ。じゃねぇと、いつまでたっても、俺はイカねぇからこのまんまだけど、いいの?」
下にいるのに、まるで見下されているような視線に肝が冷える。
私は言われるがまま、おずおずと腰を揺らし始める。
体とは違って私の気持ちは、いつまで経ってもこの行為に慣れる事はない。
「ふふっ、へったくそ」
彼が言って笑い、視界が反転する。彼の解いた長くて綺麗な髪が、私の頬をくすぐった。
「声我慢すんなっ、しっかり聞かせろっ……」
「んンっ、あっ、ああぁっ……」
髪を掻きあげて自らの唇を舐め、膝裏を持った瞬間一気に腰を突き入れた。
心底楽しそうな顔で行為に耽る彼から、目を逸らして早く終わってと心の中でいつものように唱え続ける。
事が終わると、彼はすぐにシャワーを浴びに行く。
今日は意識がなくなるまで抱かれる事がなくて、安堵する。
機嫌が悪かったりすると、たまに乱暴に抱かれたりするから、怯えながら彼といるのが凄く疲れる。
ウトウトし始めた私の耳に、扉が開く音が届いて体が強ばる。
「俺出掛けるから、勝手に帰っていーよ」
素早く身支度を整えると、彼はチラリとこちらを一瞥してすぐに部屋を出て行った。
彼と離れると体から力が抜ける。
立ちたいのに、力が入らなくて動くのが億劫だけど、早くこの部屋から、あの人の香りがする場所から離れたい。
ボーッとしていると、再び扉が開く。
私の日常が壊された後、もう一つ変化があった。それが、今部屋に入って来た人物との関係だ。
「、大丈夫か?」
遠慮がちにゆっくり頭に手を置かれ、無意識にビクリと体が揺れた。
「っ……シャワー、するだろ?」
一瞬、少し悲しそうな顔をするけど、すぐに優しい笑みに変わる。