第1章 最悪な関係の始まり
何事もなかったかのように、彼は再び腰を動かし始めた。
強弱をつけて繰り返される律動に、喘ぐ以外で私が出来る事なんてなかった。
「はぁー……やべぇ……ん中気持ちよすぎてっ、出たくねぇわ……」
「もぉ……ゃ、だっ……」
これ以上、この人で気持ちよくなるのが嫌で、もう解放して欲しい。
「こんなイキまくってぐちゃぐちゃなのに、まだんな事言う元気あんだな……ますます気に入ったわ」
勘弁して欲しい。そんな言葉、いらないのに。
この日だけ我慢すればいいと思ってた私を、闇に突き落とす言葉が紡がれた。
「これからもよろしくな……ちゃん……」
鎖のようなものが、体に絡みついて逃げられない感覚。
まるでそれは呪いのようで、私をどんどん蝕んでいく。
そして、しつこいくらいに繰り返される行為を、まるで他人事みたいに感じていた。
保健室の扉が叩かれ、これ以上酷くなる事があるのかと、私は絶望する。
「やっぱ来た……ちょっと待ってなー。逃げんじゃねぇぞ?」
昂りが引き抜かれ、逃げる気力なんてとっくになくなった私の頬を撫でて、彼は扉の方へ歩いて行く。
微かに声がするけど、もうそれを聞く元気もなくて、私は体ごと横を向いて体を丸くして目を閉じた。
眠りたい。眠って忘れられたら、どれだけいいだろう。
そんな事が出来るはずないと分かっていても、それに縋るしかなくて、ゆっくり意識を手放した。
名前を呼ばれた気がしたけど、もう何も聞きたくなかったから、応える事はなかった。