第1章 最悪な関係の始まり
妖艶に微笑んで、私の手の平に口付ける姿に、少しドキリとしてしまう。
初めてを全て奪われてしまったなと、ぼんやり考えながら揺さぶられる私の耳に、音が届いた。
機械音だった。多分スマホが鳴ったんだろう。
最初は無視していた彼も、しつこく鳴るスマホに舌打ちをして動きを止める。
そして、スマホの画面を見てニヤリと笑う顔に、ゾワリとして嫌な予感がした。
着信に応じながら、彼はあろう事か腰を揺らし始めた。
勿論私は、急いで自由になっていた両手で押さえる。
「おー、竜胆。どしたー?」
まるで何もしていないかのように涼しい顔で話す姿に、彼の底知れない怖さが再び蘇る。
「今はちーっと手が離せねぇ。あ? 何、竜胆そんなに知りたいのー?」
そして彼はスマホを操作した後、私の顔の横にスマホを置いた。
終わったのかと思った私の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。
『おい、兄貴。一体何してんだよ……』
何をするつもりなのか、私は急いで彼を見る。すると、彼は私の身を凍らせるような言葉を発する。
「保健室でちゃんと、気持ちいい事してる」
『は? 気持ちいい事って何……つか、何で?』
まるで悪戯しているみたいな顔で笑い、私の耳元で囁いた。
「の可愛い声、聞かせてやろーな?」
私の腰を両手で固定して、目を細めた彼を見て、血の気が引いた。
『おいっ、兄貴っ! どういう事か説明しろよっ!』
「るせぇ……騒ぐなよ。男と女がする気持ちいい事っつったら、一つしかねーだろ……なぁ? ちゃん」
自らの唇を舐める仕草が、異常なほどの色気を醸し出していて、こんな状況なのに見惚れてしまう。
『まさか……兄貴っ……っ!』
スマホの向こうから竜胆君の焦って叫ぶ声が聞こえる。
彼の腰が引かれ、昂りが少し引き抜かれた後、一気に突き入れられた。
「ぃやっ、やめっ……ふ、あぁあああぁあっ!」
首を振り、手でしっかり口を覆ったけれど、そんな事で襲いかかる衝撃を抑え切れるわけもなく、無常にも声は出てしまう。
一回そうなってしまったら、もうどうにも出来なかった。
「はぁー……あーあ、切れちゃった」
残念なんて絶対思っていない顔で言う。