第1章 最悪な関係の始まり
手首を手で押さえつけられているだけなのに、動けない。
恐怖と不安でガタガタと体が震える。
「大丈夫かー? 心配しなくても、大人しくしてれば、すぐ気持ちよくなるからさ」
頭の上で手を束ねられて、脚を撫でられるとゾワゾワとしてくる。
「ゃめ、てっ、下さっ……」
「やだ。やめるわけないじゃん、何言ってんだよ」
「何でっ、私、なんですかっ……」
「あ? ただ気に入ったから」
一度会っただけで何処をどう気に入ったのか。何よりそれだけの理由でこんな事をされるなんて、たまったものじゃない。
こんな堂々と強姦紛いの事をしようとしているのに、どこまでも楽しそうで涼しい顔をしている目の前の男が、全く理解出来ずにいる。
好きでもない上に、会ったばかりの男にこんな簡単に組み敷かれて、これから始まる考えたくもない行為にただ震えた。
「竜胆もお前の事気に入ってるみてぇだし? 俺らも仲良くしよーぜー、ちゃん」
竜胆君とは席が隣だから仲良くしてくれているだけで、別に私を気に入ってとかではないのに。
この人には、そう見えたのだろうか。
「せっかくの初体験だし、竜胆のお友達ってのもあるし、特別に優しく愛してあげるよ」
「ゃ、だぁっ……」
目の前の、綺麗で残酷な笑顔を浮かべる男に、私の抵抗なんて全くなんの意味もなくて、涙が止めどなく溢れる。
「へぇー……泣き顔も可愛いねぇ。やっぱお前、いいな……」
「ひっ……もっ、やめ、てっ……」
制服を開かれ、ブラが外され、下着も剥ぎ取られてしまった。
もう、終わるのを必死に耐えて待つしかなかった。
誰にも触られた事のない部分にまで触れられ、顔を逸らして唇を噛んで耐えていると、ゆっくり前を向かせられる。
涙で滲む視界に、彼の無表情な顔が入って来たかと思うと、突然唇が塞がれた。
思考が停止する。
小さくちゅっちゅっと音を立て、啄むみたいなキス。
意味が分からず呆然としている私の顎を持ち、クスリと笑う。
「いい子だからちょっとだけ口開けて……ほら、あーん」
親指で唇を押されながら、口を開かされる。
「舌、噛むなよ」
すぐにぬるりと舌が差し込まれ、驚きに体を固くして口を閉じそうになるけど、口の端に添えられた指がそれを許さない。