第4章 君に笑顔を
驚いて振り返ると、蘭さんが立っていた。
「勝手にいなくなっちゃ駄目でしょ。そんな可愛い格好しちゃって。あれ、シャワーした? いい匂いする」
腰を持って引き寄せられ、首元に蘭さんの顔が埋められる。
「っ……り、竜胆君っ、にっ……許可もらってっ……」
くすぐったさに身を捩る。
「許可なんてなくても、何でも好きに使え。つーか、俺より先に竜胆にその格好見せたのかよ……面白くねぇ」
肩に頭を置いたまま、私を見る蘭さんが拗ねたような顔をした。
どうしよう、凄く、可愛い。
「ふふっ、何処で競ってるんですか?」
素早く顔を上げ、蘭さんは何も言わずに私を見つめた。
「わっ!」
また担がれた。しかも、今は膝上までの服だから、この体勢はあまりよくない。無意識にお尻の辺りを押さえる。
「へー、竜胆のセンスもなかなかじゃん」
「め、捲らないで下さいっ!」
押さえていない部分の布を捲られ、下着を見られた。恥ずかし過ぎる。
部屋へ連れて来られ、ベッドに降ろされた。
蘭さんが覆い被さり、心臓の動きが早くなる。
「す、するん、ですか?」
「……今はしねぇ。こんな美味そうなもん前にして、俺が据え膳食わないなんて貴重なんだから、感謝しろよ」
軽く触れるキスをして隣に移動して寝転び、再び私を腕の中に閉じ込めるみたいにして抱き寄せた。
額にキスが落ちて、頭上から「おやすみ」と声がして、それに私も「おやすみなさい」と返した。
少しだけ、蘭さんの胸元の服を掴む力を強めて、ゆっくりと目を閉じた。
結構寝たつもりだったのに、眠気はすぐに訪れるもので、すぐにウトウトし始める。
頭上からは、蘭さんの規則正しい寝息が聞こえて来て、それに釣られるように、私の意識も眠りに引き込まれて行った。
翌日、よく眠ったせいか朝早くに目が覚めてしまったので、何か出来る事はないかと思い、朝ご飯を作る事にした。
キッチンを使う事に関しては、後で謝っておこう。
前も思ったけど、男二人の家にしては、食材もしっかり揃っている。支度を始めてすぐ、扉が開いて竜胆君が現れた。
「何してんだ?」
「あ、竜胆君おはよう。勝手にキッチン使わせてもらってる」
「それは別に構わねぇけど……」