第4章 君に笑顔を
何か言いたそうにしていたけど、洗面所に向かう竜胆君を視線で見送る。
とりあえず軽いものをサッと作る。
「へー、なかなか手際いいんだな」
「そう? 大した事してないんだけどね。でも嬉しい」
なかなか褒められる事なんてないから、照れてしまう。
三人分をテーブルに並べて、蘭さんを起こしに行こうとすると、竜胆君に止められる。
「兄貴、寝起きクソ悪いから、起きてくるまで待った方がいいぞ。まぁ、お前に何かするとは思わねぇけど……」
「そうなの? 今までそんなに酷かった印象ないけど……」
何度か起こした事もあるし、なかなか起きない事も割とあるけど、そこまで機嫌が悪かった印象はあまりない。
とりあえず、恐る恐る部屋に戻り、ベッドへ近づくけど蘭さんはよく眠っているのか、ピクリとも動かない。
長くて綺麗な髪に触れる。
「ん……」
少しだけ身動ぎをするけど、更にベッドに潜り込む。それがまるで小さな子供みたいで、可愛い。
「蘭さん、朝ですよ。ご飯出来たので、よかったら温かいうちに食べて下さい」
少し体を揺らして、起こすように促すと、ゆっくりと垂れ目がちの目が開く。
「んぁー……もぉ、朝かよ……早くねぇ? つか、お前もまだ寝てろよ……」
「わっ……ちょ、蘭さんっ……ご飯冷めちゃいますよ? 竜胆君も待ってますしっ……」
ベッドの中に引き込まれて、抱き込められながらもがくと、蘭さんがこちらを見た。
「飯? が作ったの?」
「はい、軽くですけど。早く目が覚めてしまったので」
言うと、蘭さんは突然体を起こした。
少し遅れて私も体を起こすと、蘭さんに手を取られて立たされ、繋いだまま部屋を出る。
部屋から手を引かれて出てくる様子を見て、竜胆君は驚いたような顔をした。
椅子を引いて座らされる。
「顔洗ってくっから、いい子で座って待ってな」
頭を撫でられ、洗面所に消えていく蘭さんを見送り、竜胆君を見た。
「あんなすんなり兄貴が起きてくるなんて、すげぇ珍しいんだぞ。どうやったんだよ……。お前、すげぇな……」
特に何かした訳じゃないから、前の席からそんな目をキラキラさせて聞かれても困る。
そんなに寝起きが悪いのだろうか。
戻ってきた蘭さんが私の隣に座る。