第4章 君に笑顔を
〔灰谷蘭side2〕
女達の言葉に、が今この場にいない理由が分かった。
「あんな地味な女なんかより、私等のが……」
「に、何かしたのか?」
自分が思っている以上に、低い声が出た。
青ざめる女の一人の胸ぐらを掴んで引き寄せる。小さな悲鳴が聞こえるけど、関係なかった。
苛立ちが膨れ上がる。
女達を吐かせ、こいつらの事は後にしてスマホを手に取りアプリを開く。
手遅れになる前に、絶対に探し出す。
俺は走り出した。
アプリを見ながらその場へ急ぐ。
締め切られた扉を力いっぱい何度も蹴る。扉が壊れ、中の様子が目に入った。
はだけた制服から、綺麗で滑らかで吸い付くあの白い肌が覗き、涙でぐちゃぐちゃになったの顔。
俺に向けられていた怯えた顔だったはずが、俺を見て安堵に変わるその表情を、初めて目の当たりにした。
目の前が真っ赤になる。血が湧き、腹の中で黒く渦巻く何かが暴れ出す。
生まれて初めて、本気の殺意が沸いた瞬間だったかもしれない。
〔あなたside〕
制服のボタンが全て外され、肌が露になる。
諦めてしまう方が楽で、抵抗する事なく、ただただ流れる涙が止まらぬ目で、天井を見つめていた。
―――ガンッ!ガンッ!
その場にいる全員が扉に集中する。
扉が壊れて、外の光が入って来て目を刺激した。
そこに立つ長身の男に、私は安堵してしまう。
どうして来てくれた事を、喜んでしまうんだろう。
どうして最後まで、嫌いにさせてくれないんだろう。
好きになんて、なりたくないのに。こんな格好いいんじゃ、好きになってしまう。
私を一瞥し、蘭さんは男達を見渡した。
「……お前等さー……誰のもんに手ぇ出したか、分かってんだろーな、あぁ?」
冷静な表情のない顔からは想像がつかない、低く唸るような凄みのある声がして、私が言われているわけじゃないのに、背が冷えて、冷や汗が出る。
血の気が引いている男達の顔が、目に焼き付いて離れない。
蘭さんの異様な雰囲気が、怖くて動けない。
「お、お、俺達は、た、頼まれただけでっ……」
「あんたの女だって知ってたら、手なんかっ……」
口々に言い訳を始める男達。