第4章 君に笑顔を
少しずつだけど、竜胆君と前のように話が出来るようになって来て、彼と体を重ねる事もなくなった。
このまま友達に戻るのが、いい方法なのかは分からないけど、好きだと言われた事への返事はまだ出来ずにいたままだ。
こういう恋愛経験をした事がないから、なかなか切り出せないでいる。
竜胆君には、失礼な事をしている自覚はあるのに。
放課後になって、スマホに蘭さんからのメッセージが入って確認すると、屋上へ来いと書かれていた。
私はカバンを持って、廊下へ出た。
屋上へ向かう階段には、人がほとんどいなくて、私は足早な階段を駆け上がっていた。
「はい、ストーップ」
「蘭のとこ行くのー?」
「残念でしたー。行かせるわけねぇだろ」
またあの先輩達だ。
後退る私の背中に、誰かが立っていて、後ろから両肩を掴まれた。
「へぇー、小さくて可愛いじゃん」
「おー、今回は当たりじゃね?」
数人の男子生徒が私を囲んだ。
いつもの人達じゃなく、知らない男子生徒だ。明らかに柄が悪いのが分かる。
「男に守られていい気になってさ……ムカつくんだよ」
「今日はだーれも助けになんて来てくんないよ?」
「痛い目見たくないよね? お兄さん達に大人しくついておいで」
髪に触れて優しく言うけど、言っている事は脅しと一緒だ。
私は仕方なく、ついて行くしかなかった。
連れて来られたのは、古くて今は使われていない第一体育倉庫。
人は寄り付かないし、来たとしても不良の溜まり場になっているから、助けは期待出来ない。
どうにか自力で逃げる方法を考えないと、最悪の事態になる。
知らない人達に好き勝手されるなんて、冗談じゃない。
怖くて震える。けど、そんな事を言っている場合じゃないから、手が離された瞬間目いっぱい力を入れて暴れる。
カバンを投げて、逃げ場が出来た場所を走り抜ける。
「ちっ……捕まえろっ!」
どのくらい差があるかは分からないけど、男と女の体力差なんて一目瞭然で、私はあまり体力がある方じゃないから、追いつかれるのも時間の問題だ。
案の定、早い段階で捕まってしまう。
何で私はこんなにも無力なんだろう。
「ったく、手間かけさせんじゃねぇよっ!」
左の頬に痛みが走る。