第3章 変化
今日一日蘭さんに会っていなくて、珍しい事もあるものだなと思った。
いつもなら、逃げても追い回されて、鬼ごっこみたいに遊ばれる時だってあったのに。
そして私は、必要以上に一日中蘭さんを探してしまっている。
でも、これは見つかりたくないからであって、会いたいからとかでは、決してない。
あんな酷い人に、会いたいなんて思うわけがない。
久しぶりに静かな学校生活を送っている。
「ー、お昼行こー」
「あ、うん」
今日は学食に行く事になり、メニューに目を通す。
メニューを決めて、注文してみんなで座って食べ始める。
「蘭いないのつまんなーい」
「仕方ねぇだろ。風邪ひいたっつーんだから」
「誰も蘭の家知らないのー?」
「そういや、蘭て家の場所誰にも言わねぇよな。俺等も遊びに行った事ねぇし」
少し離れた場所で、そんな会話が聞こえる。
その中に、前に会った女の先輩達の声もあって、怖くて少し萎縮してしまう。
なるべく早くこの場を去りたくて、素早く食べる。
食べ終わり、友達に断りを入れて席を立った時だった。
「あれー? あんた、蘭のお気にじゃん」
最悪だ。見つかった。
「そうだ。あんたなら、蘭の家知ってんじゃないの?」
「そういえば、こないだ誘拐されてたのって、もしかして君だったりする?」
面倒な事になった。
前に絡んできた女の先輩と、コンビニの前にいた先輩達に一瞬で囲まれ、どうしようもなくなった。
けど、蘭さんが教えないものを、私が簡単に教えるわけにはいかない。
私は必死に声を絞り出す。
「し、知らない、です……」
「はぁ? んなわけないでしょ? 家に連れ帰られてんだったら、知らないなんてありえないじゃん」
「私だけが知ってるーとか思って、マウント取ってんの? 言えよ」
一人の先輩が私の胸ぐらを掴んだ。
「その汚い手、離してくれません?」
先輩の手首を掴んだのは、竜胆君だった。
「兄貴に絡むのは勝手だけど、関係ねぇこいつに絡むのはナシだろ。兄貴もお前等みたいな面倒なんに教えたくねぇから言ってねぇんだよ、気づけよクソビッチが。今度こいつに何かしてみろ、女だからって容赦しねぇよ?」
余程の力を入れているのか、先輩が涙目になっている。