第3章 変化
ベッドに優しく降ろされた事に、驚く。
竜胆君ならともかく、蘭さんには今までこんなに優しく扱われた事がほとんどないから。
「なんちゅー間抜けな顔してんの? アホ面ー」
意地の悪い笑みを浮かべて、蘭さんは部屋を出る。少ししてタオルとお湯らしきものを持って、すぐに帰って来て私の足元に跪いた。
これは、かなり貴重な場面なのではないか。
この人が私の足元に跪くなんて、奇跡でしかない。
「ちょっと痛いけど、我慢しろよ」
私の脚に触れて、傷口を手当してくれる。
まさかの行動が重なって、訳が分からない。
「ぃ、んっ……」
傷がピリリと痛む。
「ぁ……っ……ぅ……」
「声、エロ」
そんなつもりはないのに、変な言い方をされると、意識してしまって、変な気分になってくる。
口元を手で押さえて、声が出ないように痛みに耐える。
「やっ、そこ、怪我してなっ……」
「んー? 聞こえなーい」
太ももを撫で上げ、スカートに手が入る。傷口は蘭さんの舌が這う。
「やぁっ……傷っ、汚ぃからっ、だめっ……ぁっ……」
まさか、傷口を舐めるなんて思わなくて、蘭さんの頭を押し返すけど、スカートに侵入する手が、下着を掠めると力が上手く入らない。
「ちゃんと汚れ取ってるから大丈夫だろ……気持ちよさそうだし?」
「ちがっ……ンっ……」
ベッドに倒され、蘭さんが覆い被さる。
「で? 誰がやった? 優しいお兄さんに言ってみな?」
まだ諦めてなかったのか、私は顔を背ける。
「へー、結構強情だねぇー。いい度胸じゃん。まぁ、いつまでもつかは知らないけど」
「ぁ、いやっ……あぁっ!」
下着越しに脚の間にある突起に爪が立てられる。
ビリビリする快感が、体中を駆け巡る。
「口も少し切れてんな、クソっ……」
「んんンっ、はぁ、ぁンっ……」
唇を塞がれて、熱い舌がまるで傷を確認するみたいに、口内をねっとりと動き回る。
口の中を切っているのか、ピリッと痛む。
気持ちよさと痛さが混ざって、痛みすらも快感に変わったみたいな感覚だ。
「えっろい顔……痛いの、気持ちい?」
「わか……なっ……」
「この傷を俺以外が付けたって思うと、ムカつくなー」
頭が朦朧としている私に、彼の呟きは聞こえなかった。