第4章 天に在っては願わくば ☆*:.。. 明智光秀.。.:*☆
酔いのせいで息苦しいのか、吐息混じりに問いかける姿が色っぽくて情欲を擽られる。
男を煽るようなそんな仕草を無自覚に見せる怜を愛らしいと思う反面、その危ういほどの無防備さには大人げなく苛立ちを感じてしまうのだった。
「言葉どおりの意味だ。お前が俺以外の男に愛らしい顔を見せるのが気に食わない。生まれ日の祝いにお前を独り占めしてもバチは当たらないだろう?」
「っ、あっ…!」
腕を強めに引かれて抱き締められると、あっと思う間もなく天地が逆転する。
開いた障子の隙間から射し込む月明かりを背にした光秀さんは、口元に妖艶な笑みを浮かべてゆったりと微笑んだ。
「生まれ日など単なる通過儀礼のようなものだと…お前に出逢うまではそう思っていた。祝いなど必要ない。特別な感慨など抱くこともなかった。だが今は…お前が祝ってくれるこの時が刻一刻と過ぎていくことすら名残惜しく感じる。怜、愛している」
「光秀さん…私も…愛しています。生まれてきてくれてありがとうございます。今夜、貴方が傍にいてくれる。それだけで私は幸せです」
争いのない太平の世を実現するために自ら暗闇を歩む光秀さんの帰る場所、その足元を照らす光になりたい。
貴方がこの世界に生まれた日をこれからもずっと隣で祝いたい。
自分が生まれたこの日がいかに尊いものかということを貴方に知って欲しい。
貴方が自分の命を大切に思えるように……私は貴方の心を支えたい。
愛しています。光秀さん。