第4章 天に在っては願わくば ☆*:.。. 明智光秀.。.:*☆
「ふっ…そんなに物欲しげな顔をされてはな」
くくっ…と愉しげに喉奥を震わせながら、手の甲でするりと頬を撫でる。
軽く触れられただけだが、快楽に貪欲になった身体にはそれだけでも強い渇望を抱かせるものになる。
「っ…あっ…もぅ…お願い…光秀さんっ…」
極限まで高められた渇きを癒して欲しくて、掠れた声で懇願する。
自分から強請るなんて恥ずかしい、などという普段なら持ち合わせている羞恥心も理性も頭の片隅に追いやって、剥き出しの本能のままに愛しい人を欲する。
(お酒のせいにしてこのまま全て委ねて…光秀さんに溺れてしまいたいっ…)
「っ、あっ…光秀さんっ…」
焦れったくなり、自分から光秀さんへと腕を伸ばして縋り付く。
着物が肌けた上体を起こし、首の後ろへ手を回して引き寄せると、躊躇うことなく唇を重ねた。
揺らぎの無い湖面の静けさを湛えたような金色の双眸が一瞬驚いたように見開かれる。
「んっ…ふっ、うっ…」
『貴方が欲しい』
声にならぬ声で心の奥に燻る熱を伝えるように口付けを深めると、光秀さんの方からも応えるように深くまで重ねられる。
「っ…怜っ…」
切なげに名を呼ばれ、強く抱き寄せられる。
隙間がないぐらいに抱き合って互いの熱を感じ合うと、言い様のない多幸感が身体中に満ちていき、互いの存在が決して欠けてはならないことを痛感する。
「お前は俺の唯一の番だ。今世でも来世でも…」
ー天に在っては願わくば比翼の鳥と作らん
地に在っては連理の枝と為らん
生々死々に決して離れることなかれ
来年も再来年もそのまた先も…貴方がこの世に生まれた日を共に祝おう。これから貴方が進む道がたとえ険しく辛いものだとしても、どんな時も私は貴方の隣にいよう。
私達は決して離れることのない番なのだから。