第3章 聖なる夜に ☆*:.。. 徳川家康 .。.:*☆
それから数日、お互いに忙しい日々を過ごしながらも、私は家康に内緒でクリスマスの会の準備を進めていった。
そして今日は待ちに待ったクリスマス当日。
「うぅ…今日は朝から冷えるなぁ。この寒さだと夜はもしかするともしかするかも…?」
佐助くんの予報どおり夜には雪が降るかもしれないな、と寒さに身を震わせながらも期待が高鳴る。
「怜、そんなとこで何してるわけ?そんな薄着で外に出たりして、風邪でも引いたらどうするの?」
庭に出て曇り空を見上げていた私の傍にやって来た家康は、肩にそっと自分の羽織を掛けてくれた。
羽織から家康の香りと温もりを感じて、嬉しさで頬が緩んだ。
「あ、家康。ありがとう。ふふ…今日は特に寒いから雪が降るかなって思って」
「雪?それでこの寒い中、空なんか見上げてたの?物好きだね。雪の日なんて面倒なだけでしょ。寒いし、身動き取れないし」
「そんなことないよ。雪の日って何だかワクワクすると思わない?それにね、今日は特別だから…」
「またそんな呑気なこと言ってる…特別って何?」
「うん、あのね、今日は五百年後の日ノ本ではクリスマスっていう日なの。この日に雪が降るとホワイトクリスマスっていってね、すごくロマンティックな日なんだよ」
「くり…すます…?ほわいと…って…何それ?どういう日なの?ろまん…何だって?」
心底訳が分からないといった風に眉を顰める家康が微笑ましくて、私はゆっくりとクリスマスのお話を始めた。
「ふぅん…異国の神様の生誕祭か…信長様が好きそうな話だね」
「実のところ五百年後では宗教っぽい意味合いはだいぶ薄れてて、この日は家族や恋人…大切な人と過ごす日になってるんだけどね。美味しい食事やお酒を楽しんだり、贈り物を贈り合ったりするの」
「大切な人と過ごす日か…じゃあ今夜は早く帰って来なくちゃね」
家康は優しく微笑みながら私の身体を抱き締めてくれる。
「あ…えっと…早く帰って来れそう?」
「ん…帰るよ。だって大切な人と過ごす日なんでしょ?怜と二人でクリスマス…したいから」
「っ…家康っ…」
クリスマスを二人で過ごしたいと言ってくれた家康の優しさに、胸の奥がじんわりと暖かくなる。
今にも雪が降り出しそうな寒さも、抱き締めてくれる家康の温もりで少しも寒くなかった。