第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
(ふふ…皆、嬉しそう。こうやって皆で焚き火を囲んで同じ料理を食べて…こんな風に政宗をお祝いする一日を戦場で迎えられるなんて思ってもみなかったな)
しみじみと今日という日の幸福を噛み締める。
「政宗…ここまで連れて来てくれてありがとう。政宗の生まれた日を一緒に過ごせて私、幸せだよ」
「礼を言うのは俺の方だ。これだけの用意をするのは大変だっただろ?ありがとうな、怜。こんなに幸福な誕生日は初めてだ」
「政宗…」
肩を抱き寄せられ、頬に柔らかい唇が触れる。
ちゅっ、ちゅっと小鳥が啄むような可愛らしいキスが幾重にも重ねられて、擽ったさに身を捩る。
「んっ…政宗っ…待って…まだ…お祝いが残ってるの」
「ん……?」
このまま身を委ねてしまいたい気持ちもあったが、お祝いにと用意したものがあと一つ残っていたのだ。
料理の後で出そうと思っていたソレを取りに行くために、政宗の傍を離れる。
「………怜、それ、何だ?」
程なくして戻って来た私の手にした盆の上のものを見て、政宗は不思議そうな声を上げる。
私がお祝いに用意したのは誕生日ケーキだった。
とはいっても、この時代に現代と同じくたっぷりのクリームでデコレーションされた誕生日ケーキを用意するのは流石に無理で、私が用意したのは現代で言うところの『カステラ』のような焼き菓子だった。
それでも、この時代で焼き菓子を作ることはなかなかにハードルが高くて、信長様にお願いをして何とか材料などを揃えたのだ。
異国と交易をしている信長様の元には、この時代には貴重な砂糖や牛乳、卵、小麦粉といった西洋菓子の材料が入ってきており、それを融通してもらったのだ…作ったカステラをお裾分けすることを条件に。
第六天魔王などという恐ろしい二つ名で呼ばれている信長様だが、意外にも甘いものがお好きな方で、怜が西洋菓子を作りたいと言うと興味津々で協力して下さったのだった。
(デコレーションケーキとは程遠い、飾り付けも何もないシンプルなカステラだけど、ローソクも立てたし、誕生日っぽい雰囲気は出てるはず…)
「私のいた500年後の未来では、誕生日には歳の数のローソクを立てたケーキっていう西洋菓子を食べる風習があるの。ローソクを一息で吹き消せたら、その年は良いことがあるって言われてるんだよ」