第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
「怜っ…」
政宗は、自分の顔を見た途端にその場にへたり込んだ怜の元へ、甲冑を鳴らして慌てて駆け寄ると、躊躇いなく抱き起こした。
「怜っ、どうした?」
「ご、ごめん…政宗の顔見たら安心して気が抜けちゃった」
事前に無事だと聞いてはいたものの、実際に変わりない姿を見たことで一層安心感が増したのか、気が抜けてしまったようだ。
「心配するな。戦は終わった。約束はちゃんと守ったぞ?」
「ふふ…じゃあ今宵は戦の勝利も合わせてお祝いも二倍だね。おめでとう、政宗」
「ああ…ありがとう」
頬を包み込む政宗の手は暖かく、至近距離で見つめられてトクトクと胸の鼓動が騒がしく早鐘を打ち始める。
政宗の端正な顔がゆっくりと近付いてきて……
(あっ…キスされる…?)
一緒に引き揚げてきた兵達もまだ周りにいるというのに、それすら気にならないほどに私は政宗しか見えていなかった。
キスの予感にそっと目を閉じて、自分から政宗に身を委ねる。
「……ちょっと…人前で…やめてくれます?」
「っ…ひゃぁ!い、家康?うわぁ…ごめんなさい…」
(忘れてた!家康も一緒に戻ってたんだった。私ったら皆の前で…恥ずかしい)
慌てて政宗の腕の中から離れて周りを見回すと、兵達が私達二人を見守りながら微笑ましげに表情を緩めていた。
「ふ、二人とも、お祝いの準備もうできてるから…早く席に着いて!」
恥ずかしさを誤魔化すように二人に告げ、政宗の誕生日祝いの宴は兵達も交えて賑やかに始まったのだった。
「おっ、この煮物、味が良く染みてて美味いな。一晩煮込んだような味だ」
「そうなの、干し野菜だと短時間でもしっかり味が入るんだよ」
「へぇ…面白いな。お前、腕上げたな」
「ふふ…ありがとう。政宗に褒められるのは嬉しいな」
用意した料理を一つ一つ味わって食べてくれる政宗の姿に、ふわりと胸の内が暖かくなる。
戦の勝利も相まって兵達の雰囲気も開放感に満ちていて、政宗への祝いの言葉や賞賛の声が彼方此方から聞こえていた。
「政宗様っ、おめでとうございます!」
「政宗様がいらっしゃれば、我が軍は無敵ですぞ!」
「どこまでもついて行きます、政宗様!」