第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
流石に歳の数を立てるのは無理だったが、灯りの少ない戦国の夜に何本ものローソクの柔らかい火がゆらゆらと揺らめいている様は幻想的で美しかった。
「一息で吹き消すか…面白そうじゃねぇか」
「政宗さん、できるんですか?」
揺れるローソクの火を愉しげに見ていた政宗だが、家康の揶揄い混じりの煽りに俄然やる気を見せる。
事の成り行きを見守っていた周りの兵達にも自信たっぷりに笑って見せると、兵達からわぁーっと歓声が上がった。
「政宗様、頑張って下さい!」
「姫様の前ですからね、いいとこ見せて下さいよ!」
「おぅ!任せとけ、こんなもん、朝飯前だ」
兵達の囃し立てる声に破顔した政宗は、気合いを入れ直すかのようにふーっと息を吐き出した。
何だか微妙に趣旨が変わってしまったような気もするが、当の政宗を始め、皆が楽しそうなので良しとする。
皆が注目する中、政宗はカステラの乗った皿に顔を近付けてゆっくり息を吸い込むと…勢いよくローソクの火を吹き消した。
固唾を飲んで見ていた周囲からは、大きな歓声と拍手が巻き起こり、場の雰囲気は一層の盛り上がりを見せる。
「誕生日おめでとう、政宗!」
一息でローソクを吹き消して満足げな笑顔を見せる政宗はこの上なく男らしく、そして子供みたいに可愛かった。
(男らしくてカッコいい政宗も、子供みたいに無邪気な政宗も、どんな政宗も好き)
溢れる想いのままに改めてお祝いの言葉を送ると、政宗はこの上ないぐらいの嬉しそうな笑みを返してくれた。
「ありがとう、怜。これまでに過ごして来たどんな生まれ日の一日よりも、お前に祝って貰えた今日という日がこの上なく幸せだ。来年も再来年もお前に俺の隣でこの日を祝って欲しい」
「政宗っ…私も…毎年貴方をお祝いして、ずっとずっと傍にいたいよ」
生まれ日の祝いなど、母に疎まれた自分には随分と長い間、無縁のものだった。
その日は特別でも何でもなく、過ぎていく日常の中の一日だとしか思えなかった。
けれど怜と出逢って、当たり前に過ごす日常も愛する者がいればそれだけで特別なものになるのだと知った。
願わくば、来年も再来年も特別な一日をあなたと……