第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
その頃、怜は政宗の帰りを待ちながら今宵の宴の準備に忙しくしていた。
「怜様、この野菜は如何致しましょうか?」
「あ、それは胡麻和えにするのでこっちにお願いします」
「怜様、これは…」
「すみません、それはここにお願いします!」
後方任務の兵達が準備を手伝ってくれ、次々に料理が完成していく。
(戦のことは気懸りだけど、私は今、自分ができることをやろう。家臣の皆さんも政宗を祝うのを楽しみにしてくれているし)
戦場で誕生日祝いの宴をするなんて突拍子もないことに、政宗の家臣達は驚きながらも喜んで受け入れてくれ、こうして楽しんで準備も手伝ってくれている。
それは政宗がいかに皆に信頼され愛されているかの証のようでもあり、私にとっても嬉しいことだった。
「さぁ、もう少しで出来上がりますから…皆さん、よろしくお願いします!」
「はいっ!」
気合いを入れ直して最後の準備にかかる。
料理は予め用意してきた干し野菜を戻して煮物や和え物、汁物など様々な方法で調理したものだ。
干し野菜にして量(かさ)が減った分、沢山の種類の食材を持参できたので、料理も多く用意できた。
戦場ということで生ものなどを供することは難しいが、それでも干した魚や肉も程よく取り入れて調理した。
料理上手な政宗に手料理を披露するのは毎回緊張するが、政宗はいつも忌憚のない感想を伝えてくれるから、頑張り甲斐もあった。
(よし、料理の用意はできたから後はあれだけ…)
宴の料理の最後にと用意した、現代の誕生日には欠かせないアレ。
この時代に同じものを用意するのは流石に難しかったのだが…
「怜様っ!政宗様がお戻りです!」
祝いの準備の最終確認をしていると、見張りに立っていた兵の一人が勢いよく駆け込んで来た。
「戦が終わったのですか?あの、政宗は無事ですか?」
「はい!我が軍の勝利でございます。政宗様もご無事のご帰還です」
「っ…よかった…」
政宗が無事と聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。
負けるはずはないと信じていても、やはり心のどこかで不安だったのか、程なくして帰陣した愛しい人のいつもどおりの自信に満ち溢れた顔を見た途端、私はへなへなとその場に崩れ落ちそうになってしまった。