第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
「お帰りなさい、政宗。怪我とか、してない?大丈夫だった?」
甲冑越しでは分からないとは思いつつも、政宗の無事を確かめずにはいられず、籠手に覆われた腕にそっと触れる。
「誰に言ってる?この俺が怪我なんて、するわけないだろ?それに、今日もグダグダと張り合いのない戦だった。いい加減、決着つけねぇとな…遊びはもう終わりだ」
冷静な口調とは裏腹に、隻眼をギラつかせ獣のように獰猛に咆える様子から、怜は政宗に若干の苛立ちを感じ取る。
着陣した当初は『こんな戦、誕生日までに終わらせてやる』と息巻いていた政宗だったが、支城に籠る大名の思った以上の弱腰の姿勢に、思うように連携が運ばず今に至っているのである。
(信長様には悪いが、あれは国境を守る支城の主としては些か心許ないな。上杉の方も軍神に無断で支城攻めを強行するなんざ、なかなか気概のある将かと思ったが存外つまらない戦い方をしやがる。こうなったらこっちから仕掛けてさっさと片付けるか…)
「……政宗、大丈夫?」
「……ん?」
「難しい顔してる」
無意識に眉間に寄っていたのであろう皺に怜のほっそりとした指先が触れる。
指の腹で優しく宥めるように撫でられて、擽ったいような何とも言えない心地良さに襲われる。
「っ……」
「戦のことは私には分からないけど、明日は政宗が楽しいお誕生日の時間を過ごせるように準備するね。政宗に笑ってもらえるように私、頑張るから」
「はっ、可愛いこと言ってくれる。なら、俺も頑張らないとな。明日で全て終わらせてお前の元へ戻る。俺のこと、目一杯祝わせてやるよ」
「ふふ…じゃあ、お互い頑張らないとね!」
どちらからともなく視線を合わせると、先程まで険しかった政宗の表情が少し柔らかくなっていて、怜は胸の内で秘かに安堵の吐息を漏らした。
(戦の最中、こんな場所だけど、政宗には毎日を楽しい気持ちで過ごして欲しい。いつだって笑っていて欲しいから…)