第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
御殿に戻ると、休む間もなく早速、食材の下拵えを始める。
戦場に沢山の食材を持っていくために私が考えたのは、『干し野菜』を作ることだった。
『干し野菜』とは、野菜を薄く切って水分を除き、天日に干したもので、通常よりも保存が効く。
野菜は天日干しにすることで、本来の旨味と栄養が凝縮されて野菜本来の味が更に美味しくなる。
水分が抜けるので歯触りや歯ごたえもグッと良くなり、同じ野菜でもまた違った食感を楽しむ事もできる。野菜特有の青臭さもなくなり、皮や葉の部分も美味しく食べられるため、貴重な食材を無駄にしない。
水分量の少ない干し野菜は、味がしみ込みやすく煮込んでも煮崩れしにくいから煮物にも合うし、炒める場合にもカラッと炒まり、火の通りも早いから、戦場でも調理しやすい。
野菜だけでなく、きのこ類や肉や魚、果物など、何でも干せるし、半干しのものならよく晴れた日であれば半日ぐらいでできるから、三日後の出陣にも間に合うだろうと思う。
(今夜中に野菜を全て切って明日の朝から干せば間に合う。量が多いけど、頑張ろう!)
ひたすらに食材を切り、ザルに広げて並べていく作業に没頭していると、時間が経つのも忘れてしまっていた。
「怜、もうそろそろ終わりそうか?」
厨の入り口に姿を見せた政宗は、野菜を切る怜の手元を興味深く見ながら言う。
「政宗!うん、もうすぐ終わるよ。政宗は?軍議は済んだの?」
夕餉の後は、家臣達との軍議があると聞いていた。
「ああ、準備万端だ。早く出陣したくて気が逸ってる」
飢えた獣のようにギラギラと瞳をぎらつかせた政宗は、本当に今にも駆けていきそうだった。
「ふふ…政宗らしいね」
「お前は、それは何してるんだ?まだかかるんなら手伝ってやるぞ。切るだけか?」
「えっ…そんな…いいよ。政宗、疲れてるでしょ?戦支度とか軍議とか…今日は休む間もなかったじゃない」
「馬鹿、それぐらいで疲れるかよ。逆に気分が昂っていい具合だ」
政宗なニヤリと不敵に笑うと、止める間もなくサッと包丁を手に取って野菜を切り始めた。
その手捌きは見惚れるぐらい鮮やかだ。