第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
「「怜、こんなところにいたのか」
「政宗っ!」
通りの向こうから歩いてきたのは、政宗だった。
「どうしたの?戦の支度の方は…」
「早めに終わったから、お前を迎えに来た」
政宗が蘭丸くんをチラリと横目で見ながら言う。
「あ、蘭丸くんとは偶然会って…荷物を運ぶのを手伝ってくれたんだよ」
「ふーん…」
蘭丸くんに意味ありげな視線を投げた政宗は、いきなり私の肩を抱き寄せる。
熱い吐息が首筋にかかって、胸の鼓動が早くなる。
突然のことに驚いて、手に持っていた荷物を取り落としそうになったのを、政宗の手が支えてくれた。
「あっ…政宗…ありがとう」
「ほら、寄越せ、俺が持ってやる。蘭丸も悪かったな、あとは俺が代わる」
空いた手を蘭丸くんの方に差し出した政宗は、蘭丸くんの返事を聞く前に風呂敷包みを掴んでいた。
有無を言わせぬ政宗の態度に、蘭丸は肩を竦める。
「なんだ、この後、怜様とお茶していこうと思ってたのに、残念!じゃあ、またね☆怜様!」
「あ、うん!ありがとう、蘭丸くん!」
眩しい笑顔を振り撒いて蘭丸くんは去っていった。
(う〜ん、爽やかだな、蘭丸くん。笑顔が眩しいっ!)
「……おい、怜、買うものはこれで全部か?」
「あ、うん…」
「なら、そろそろ戻るぞ。じきに暗くなる」
時間を忘れて買い物をしていたら、いつの間にか日が暮れ始めていたようだ。
西の空が、薄ぼんやりと茜色に染まりつつあった。
穏やかな夕暮れの風景を眺めていると、あと数日後には自分達は戦に行くのだということが信じられなかった。
政宗と一緒なら、どこに行こうと恐れることはない。
政宗の強さは知っているし、彼が負けるところなど想像できない。
それでも何が起こるか分からないのが戦だから、全く不安がないわけではなかった。
どうか皆が怪我なく帰還できますように…
政宗が無事に誕生日を迎えられますように…
幸福なひと時を過ごせますように…
様々に思うことはあったが、こうして政宗と二人、寄り添っていられることが、今はただ、この上なく幸福に思えた。