第2章 貴方と過ごす特別な日 ☆*:.。.伊達政宗.。.:*☆
「んっ…あっ…政宗っ、ダメっ…」
「はっ、そんな可愛い声、逆効果だぞ。もっと欲しくなる」
「あ、んっ…ダメだよ、もぅ…ほら、準備とか色々やることあるのに…昼間からこんなこと…っ」
政宗は出陣の支度があるし、私も戦場で政宗を祝うために色々用意したかった。
三日後に出陣なら今すぐ準備しないと、十分な用意ができないかもしれない。
なにしろ未知のことなので何をどうすればいいのか分からず、気持ちだけが焦っていたのだ。
弱いところを探るような指の動きに身体の熱を煽られながらも、政宗の胸を強く押し返す。
「っ…今はダメっ!」
「分かった、分かった。今はダメってことは…夜ならいいってことだな」
「ええっ…」
「じゃあ、俺はこれから戦支度にかかる。約束、違えるなよ?」
「約束って…ちょっ、政宗、待ってよ…」
先程までの強引さと打って変わってあっさりと身体を離した政宗は、もう武将の顔になっていて…近くに控えていた家臣にキビキビと指示をしていた。
その切替の早さに驚きながらも、私もまた気合いを入れ直すように、政宗との口付けで緩んだ表情を引き締めたのだった。
「さてと…なるべくなら荷物は軽くしたいけど、お祝いらしい料理も用意したいんだよね。現地調達は難しいだろうから食材は沢山持って行きたいけど…」
政宗と別れた後、食材の調達などのため、私は城下へ来ていた。
その時の戦の状況にもよるが、政宗の誕生日当日を祝う宴を戦場で開きたい。
お城で開く盛大な宴には及ばなくても、政宗の好きな料理を振る舞って兵達と一緒に祝うことができればいいなと思う。
とはいえ、戦場での食事は普段とは大きく異なり、腹に巻いたり腰にぶら下げたりできるような『陣中食(携行食)』が基本だ。
陣中食の主なものには、握り飯・乾飯、兵糧丸、味噌玉、芋茎縄などがあって、各軍ごとに味付けに工夫があったりするのだという。
保存が効いて戦の最中でも簡単に準備ができて食べやすいもの、それが陣中食なのだ。
食事を楽しむというよりは、いかに簡易に栄養を取れるかに重点を置いて考えられていると言っていい。
普段の宴で食するような凝った料理を用意するのは、戦場ではなかなかに難しいことなのだ。
(それでも、政宗が楽しみにしてくれているのなら、何とか工夫してみたいけど……)