桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第14章 雑念を君だけに【トラファルガー・ロー】
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地獄の放課後まで自分はどうやって仕事をしたのだろうか。デスクを見ると何もかもが中途半端に広がった資料が自分の集中力のなさを露見させる。
そろそろココを一旦離れなければ。
保健室は私の城。私の居場所。
そして彼との秘密の逢瀬の場所。
篭城していたのに投降する御殿様の気分だ。
──ガラガラッ
しまった、遅かったか、と顔を上げるとそこには彼女ではなくローの姿。
久しぶりに見る彼は随分と男らしく見えた。
ドキドキと胸がときめく。恐らくこれから来るあの子もきっと同じ気持ちだろう。
「…先生、ここに居て下さい。仕事があるのでしょう?」
「え…?」
珍しく敬語で話してくる彼に戸惑いを隠せない。あまりに他人行儀なその振る舞いに胸が締め付けられそうだ。
「…あ!トラファルガー君!早かったね!あれ、先生。」
「あ、ご、ごめんね…!」
慌ててパソコンを持って立ち去ろうとするとバンッと扉を閉められた。
「…と、トラファルガー君?」
「で?何?オレ、先生に用事があるから此処に来ただけだから。」
「「え?!」」
被った声は私とその女の子。
お互い寝耳に水で顔を見合わせて戸惑いを隠せない。
だが、恐らく慌てふためくこの姿で彼女も何となく事情を察している。
「あ、えと…ま、また…こ、今度にする‼︎折角来てくれたのにごめんね!」
「いや?オレ、先生に相談があったから丁度ここに来ようと思ってたし。」
要するに此処に来たのは自分に相談があったから了承しただけだというのか。
「そ、そっかぁ!そしたらまた今度…‼︎先生、またね!」
「ああ、そ、そう。またね。」
彼女が苦笑いしながら出ていくのを見送ると地獄の空気が保健室の中を蠢いている。
一体、話とは何だというのだ。今度は別の意味でドキドキしている。いくつ心臓があっても足りない。