桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第14章 雑念を君だけに【トラファルガー・ロー】
頭をぽんっと撫でると部屋を出る。喧嘩など腐るほどしてきたが、付き合ってからは初めてのことだ。辛かったことに気付いてやれなかった自分に酷く情けなさを感じた。
「…やっぱりガキだな、オレは。」
***
ローと喧嘩をしてしまって1週間。
たった1週間なのにもう何週間も経ったかのようだ。
一日一度は必ずやってくる彼の姿を見かけることはない。
家に帰ったらお互いの家を行き来していたのにここ1週間1度も顔を合わせていない。
電気がつくと在宅していることは分かるが会うことが憚られる。
──ガラッ
「あ!先生ーー‼︎今日の放課後いいですか?5分だけなんで‼︎」
制服で入ってきた彼女は喧嘩の原因になったあの子。遂に今日告白すると言うことだろう。
"恋人としてオレのこと考えたことあんのかよ。"
ローの言葉が頭から離れない。
好きだよ。好きでたまらないよ?
でも、間違いなく保身のために私は安請け合いしたのだ。教師としても恋人としても失格だ。
「…きょ、今日?」
「うん!トラファルガー君、来てくれるって言ってたの!ひょっとしたら…ひょっとしちゃうかな?!やだぁー!どうしよう!」
「え…?」
実は安請け合いをしたのは別の理由もあった。
彼はわざわざ告白のためにどこかに出向くなんてことはなかった。その場で言わないなら話すら聞かないからだ。彼女が喜ぶのも肯ける。
何故…?私のこと嫌いになったの?
今までにない事象に頭痛すらする。
「わぁっ、緊張する‼︎先生、私頑張るね‼︎」
「…が、頑張って、ね。」
ツンとする鼻に涙がこみ上げてきていることが分かるが、必死に耐える。
バチが当たったのだ。どっちにもいい顔をしようとした。自分のためにローを売ったと思われても致し方ない。
"オレとソイツが付き合えば満足か?"
嫌だ、付き合わないで。
嫌だ、私だけを見て。
憧れの養護教諭という仕事に就けたのはローのおかげ。
だけど今はただそれが足枷でしかなかった。