桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第14章 雑念を君だけに【トラファルガー・ロー】
「…あの、ごめん、なさい。私、今日…その約束、しちゃった。」
「何故。」
「ろ、ローのことが好きだって…」
「だから何故。」
「フラれた時誰かに見られたく…」
「だから何故っつってんだろ。」
彼女の言葉を遮り、ジッと見つめる。自分とコイツは付き合っている。
確かに周りに言うことは叶わないがわざわざ他の女の恋路の応援をすることなど今まで一度もなかった。
「ご、めん。私、ローの受験受かったことその子に話しちゃって…」
「だから?」
そんなことは何れ公になることだ。知っている事など適当に誤魔化せたはずだ。
「…か、勝手な個人情報、言っちゃって…」
「だから?」
「だ、だから…?」
まさかとは思うが、そんなことを気に病んでその女の協力を引き受けたと言うのか?
馬鹿にも程がある。
「…要するにお前は自分の保身のためにその女の気持ちもオレの気持ちも分かってて弄んだっつーことでいいか。」
「え…?!ち、違う‼︎そ、そうじゃない…!」
「オレとそいつが付き合えば満足か。」
「ち、違うの!そうじゃない…!付き合って欲しいなんて思ってない!」
振り返ったその顔は涙目で顔は青ざめていた。
その顔はこっちがしたいくらいだ。好きな女に他の女の告白の協力を宣言されたことがどれほど屈辱なのか分かっているのか?
いや、分かってない。コイツは昔からそうだ。クソ真面目で融通が効かない。相手のことを考えるあまりに本質を見逃すことも多い。
「……教師としてお前は頑張ってるとは思うが、恋人としてオレのこと考えたことあんのかよ。」
「…っ、!私だって…い、いつもローのことが好きだって相談される身にもなってよ‼︎彼女だって言うことも許されなくてどれだけ辛いか…!!」
遂にはポロポロと大粒の涙を流し始める彼女にこのままじゃ平行線だとため息をつく。冷静じゃないコイツに話したところで何も解決はできない。
「…悪いが今日は帰る。」
部屋には彼女の嗚咽だけが響く。告白を相談されてるのは何となく知ってたが、泣くほど辛かったとは知らなかった。
いつも大人の立ち振る舞いをしている彼女がこんなに泣いたりすることはなかった。