桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第2章 記憶の中の君に会いたい【冨岡義勇】
出血が多くて助かるかどうかは五分五分だったが助けた1週間後潔く目を覚ました彼女に安堵したのは一瞬で、発せられた言葉に愕然とした。
ー…あなたは、誰?あなたが助けてくれたの?ー
彼女は俺のことを覚えていなかった。
久しぶりに会ったから顔が分からないのだろうと思ったのは最初だけ。
鬼に襲われる前の記憶は全て思い出せないようで"幼馴染"だということは伝えたがキョトンとする彼女に寂しさを感じた。
「義勇、さん!今日も来てくれたんですね!ありがとうございます!」
「体調はどうだ。」
「まだちょっとお腹が痛みますがだいぶ良さそうです!お粥が食べれました!」
瀕死だったこともあり、全治は半年と言われている。
ちゃんと起きている彼女を見るのは久しぶりだった。
昔から美人だったが、貧血で白い顔をしている彼女は儚くも美しさを際立たせていた。
目を覚ましてから毎日蝶屋敷に訪れている。
自分のことは覚えていないことに申し訳なさそうにする彼女だが、会うと花が咲いたような笑顔で話してくれるのが自分も嬉しかった。
「そうか。それなら庭を散歩するか?」
「え…?あ、と…ごめんなさい。まだ、立てなくて…」
「ああ、知っている。俺が抱えてやる。胡蝶からは許可はもらっている。」
「え、え?え、えええ?!」
真っ赤な顔で驚いている彼女をよそに体を抱き上げると庭に出る。暖かい陽射しが自分たちを包み込む。
ふと腕の中を見ると、あまりに小さく、羞恥で大きな瞳を潤ませながら自分を見上げている彼女がいた。
途端にドクドクと脈打つそれはこの前、彼女を救い出した時のものとは違う。
「っ、す、すまない。嫌だった、か?」
「いえ、嫌じゃ、ないです!その、驚いてしまって…。」
どうやら嫌がってはなさそうだが、動悸は止まらずに彼女に何を話したらいいか急に分からなくなった。
しかし、そんな情けない俺に見兼ねたのか、ツンと羽織りを引っ張られる。