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桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】

第9章 理解不能【H×H イルミ・ゾルディック】






「んん?誰かと待ち合わせ?可愛いね〜。よかったら遊ばない?」


そうだ、彼がもし迎えに来るなら私を殺すために来る。何も喜ばしいことではない。

彼は暗殺一家なのだ。
それなのに…この人と一緒にいるよりも百倍胸がドキドキと高鳴り、共に過ごす時間が大切だと思わせてくれる。


「…遠慮しておきます。」

「そんなこと言わないでさ〜!そうだ!美味しいケーキでもご馳走するよ。」

「いえ、大丈夫です。」

「いいじゃん、ほら。ね?おいで。」


その男を置き去りにしてせめてこの場所から逃げ出そうと試みるが、腕を掴み上げられてしまった。

睨みつけるとニヤニヤと品定めするかのようなその表情に見覚えがある。


(…そうだ。イルミが暗殺したアイツも同じような顔してた。)


それを思い出した途端に悪寒がして、自分の中の勘が"逃げろ"と指令を出すが、ここまで全速力で走ってきた足はよく見ると靴ずれが出来ていて血が滲んで一歩動くだけで痛みを伴う。


(…こんなことなら新しいパンプスなんて履くんじゃなかった。)


何が"ナンパくらい自分で何とかできる"だ。私はいつも彼に守られていたのではないか?
数十分前の自分の言葉すら責任を持てない情けなさから唇を噛みしめると鼻がツンとした。


「震えちゃって…可愛いなぁ。期待してるならそっちでもいいよ?お嬢さん。」

「…っ、…!」


言葉にならずにフルフルと首をふることしかままならない。
足も痛い。
掴まれてる腕も痛い。
自分で自分が情けなくて心も痛い。

だけど、さっきから私の頭の中には1人しかいない。こんな状況でも頼りにしてしまうのはたった1人の愛おしい恋人。


「い、るみ…っ、たすけて…。」


遂には涙が溢れ出て来て見知らぬ土地の見知らぬ道が滲んで見えなくなった。


でも、ふわっと香った愛おしい匂いを私は間違えるはずがない。何度彼に抱きしめられたのだろうか。染みついた香りを忘れるわけがない。


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