桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第8章 チョコレートよりも甘い愛を【トラファルガー・ロー】
カチカチカチ…
時計の秒針の音だけが鳴り響く。大したことではないのにそれが虚しく部屋の中を木霊する。
1分が過ぎ
5分が過ぎ
30分が過ぎて
ついには1時間が過ぎた
耐え切れなくて置き時計を裏返しにして布団に潜り込んだのは2時を過ぎていた。
こみ上げる涙に"それは一体何の涙なのだ"と叱咤激励して必死に重力に逆らうよう命令する。
それでも一粒、また一粒と落ちていくそれを枕が吸い取ってくれた。
***
眠れないかもしれないと思っていたのに、人間眠気には勝てないものだ。目を開けると見慣れたテーブルが目に入った。
(……チョコ食べよ。)
そうだ。私には自分を慰めるために買った最高級のチョコレートがあるではないか。
起き上がろうとすると身体に何かが絡まって動けない。
「ん…?」
恐る恐る背中側を見るとそこにいたのは会いたくて会いたくてたまらなかった彼の姿。
「へ?!ろ、ロー?!何でいるの?!というかいつ来たの?!」
片目だけ眠そうに開くと裏返しにした置き時計の方を見たが時間が確認できずにチッと舌打ちをするとスマホで時間を確認する。
「何だ、まだ6時じゃねェか。もっと寝かせろ。こちとらオペが長引いて4時頃来たばかりだ。」
「よ、4時?!…それは、失礼しました…どうぞ、おやすみ下さい。」
「…ああ。…遅くなって悪かった。誕生日おめでとう。」
彼の言葉に目を見開く。
そう呟いた後、再び瞳を閉じて私のことを後ろから抱きしめてくれる彼に嬉しくて今度は寝る前とは違う種類の涙が零れ落ちた。