桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第7章 悲しみの先は【トラファルガー・ロー】
「…ロー…?」
「ああ。」
中学生になる前に私が引っ越したことで別の学校になり疎遠になってしまった幼馴染は、頭が良くて、医者家系。
「あ、あれまぁ、随分、かっこ良くなっちゃって…」
「同い年だろうが。近所のババアみたいに言いやがって。」
端正な顔立ちの中には特徴的な目つきの悪さと隈と髪色は昔のままでひどく安心した。
震えていた手はいつの間にか止まっていたが、頬に熱い滴が一筋流れ出ると顎に伝って落ちた。
「…オレがついて行ってやるから警察に行くぞ。そんな男はお前を幸せになんかできやしねェ。」
「で、でも、…!そしたらもっと蹴られちゃう…」
「帰る必要なんてない。行くところがないならオレの家に来い。」
「で、も…ローを巻き込むわけにはいかない、よ!」
「うるせェな。いいから来い。」
一度流れ始めた涙は後から後から溢れ出して止め方が分からない。
ちゃんと泣いたのはいつぶりだろうか。
心を無にしていた筈なのに、彼の瞳が感情を引き摺り出していく。
「や、だぁ…。やめて、よ。」
ーーお願い、助けて。
「入ってこないでよ…。」
ーーツライよ、苦しいよ。
泣き噦る私を跪いたまま見ている彼の感情を読み取ることはできないが、強い意志を感じた。
ああ、昔と一緒だ。
いつも彼は強気で、何でも卒なくこなして…。
いつだって彼は困った時、助けてくれた。
テストの前の日、勉強を教えてくれた。
自転車に乗れない私の練習に付き合ってくれた。
「…ロー、私…つらかったよ…。」
「…ああ。」
「自分、は、いらない人間なのかなって…」
「ンなわけねェだろ。馬鹿が。」
優しく涙を拭いとると立ち上がってそのまま抱きしめてくれた彼の体は昔と違って大きくて逞ましい。
全てを包み込んでくれるような温かさに余計に涙が止まらない。