桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第7章 悲しみの先は【トラファルガー・ロー】
私の会社では健康診断が一年に一度ある。
しかし、先日会社で行われた時に体に痣があり、他の社員に見られたくなくて有給にした。
そのため、今日は実費で近くの病院に健康診断を受けに来ている。
見られてバレたら誰か助けてくれるだろうかという仄かな期待もあった。
だが、その後の制裁が怖くてたまらないので、結局痣がある時はいつもこうやって休みの日に健康診断を受けに行くのだ。
「番号札3番の方、どうぞ。」
「はい。」
着替えると検査着から見える肌を確認してみた。
幸い手足には痣は見当たらなくてホッとするが、ここなら最悪それが見つかったとしても知り合いはいない。
それだけでも自分の心は幾ばくか楽だというものだ。
身長、体重、血圧、採血、心電図、胸部X線、そして最後にDr.の診察。
ルーティンで行われるそれは誰に対しても同じ流れ作業に感じる。
ここに自分がいてもいなくても誰も私のことなど知らない。
夫にとっても私などいなくても同じなのではないだろうか。
窓の外に広がる青い空がとても眩しく美しく見えて鼻がツンとした。
「番号札3番の方どうぞ。」
診療室の前で最後のDr.の診察を待たされていると中から出てきたのは高身長な端正な顔立ちな男性。
白衣を着ているということはDr.ということだろう。ネームホルダーには『医師』と書かれていた。
頭を下げて診療室に入るとジッと顔を見つめられてからカルテに目を通している。
「…聴診をする。服を上げて。」
「あ、はい。」
背中は大丈夫だろうか。この前蹴られたばかりだが、背中は鏡であまり見れないから確認できていない。
胸の聴診が終わると、くるりと椅子を回転させる。
背中に冷たい聴診器の温度を感じるかと思いきや感じたのは熱い指の感触にピクッと体を震わせた。