桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第24章 桜舞い散る君想ふ【宇髄天元】※
パチっ、パチっ…と木を燃やす炎を見る俺たちは衣さえあれば二人羽織のような体勢だが、を覆っているのは俺の腕のみ。
簡単に言えば完全に抱き寄せている。
しかも裸で。
どれほどこの状況がまずいかなんて言われなくとも分かっている。
分かっているが今更どうすることもできない。
冷たい体を摩ってやればピクンと跳ねる。
(…おいおい、やめてくれよ。そういう可愛い反応はよぉ…。)
こちとらまだ冷たい部分を温めてやろうとしただけ…のはずだ。
決しての体に触れたいわけではない…はずだ。
彼女の髪に顔を埋めるのは良い匂いに誘われたのではない…はずだ。
何もかもが"そのはずだ…"という不確定要素で俺の心は掻き乱されている。
「…まだ寒いか。」
「っ、…、だ、だい、じょうぶ…」
耳元でそう問えば、詰まりながらもそう答えるだけど、赤く染まる耳がどうにも可愛くて仕方ない。
「…なぁ、お前の話は…?さっき俺が先に話しちまっただろ?」
「へ、へ…?!」
「ほら、さっき…。どっちが先に話すかみたいになったろ?」
「あぁ…、あ、あれね…」
最早そんなこと忘れかけていたが、苦し紛れにこの状況を誤魔化すためだけに話を振ったに過ぎない。
自身もこの状況下でどうしたものか…と考えあぐねているのが分かる。
早く何か話してくれ。
何か話してくれないと良からぬ感情が爆発してしまいそうだ。
忍として苦しい訓練を受けてきたというのにこんなことで感情に振り回されるなんて俺も未熟だ。
「…ただ…、天元って何でそんなに私に構ってくれるのかなって…聞きたかっただけ。」
「はぁ?何言ってんの、お前。」
「だって…さ。気がついたらいつも天元がそばにいてくれてるじゃん。一人でも…平気だし、今日だって別に風邪ひいたって誰も困らないのに…心配してくれちゃってさ…。」
「何でって…そんなの決まってんだろ?それは…!」
そこまで言ってその言葉の続きを言うことが憚られた。
──ドクンドクンドクン
心臓が煩い。
俺の心臓だ。
俺は何を言おうとした?
その続きを言うことは今しているこの行為を途端に不埒なものに変えてしまうから。