桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第24章 桜舞い散る君想ふ【宇髄天元】※
「お待たせ。生存者を保護して来たよ。」
がそう笑顔で言った時だった。
──ぽたり
大粒の雨が俺たちの体に落ちて来たのは。
同時に空を見上げるとどんよりとした雲が更に増えてそこからこぼれ落ちていた。
「あー…降って来ちゃったね。一先ず藤の家に向かおう。」
「おお、そうだな。行くか。」
だが、問題はその場所がかなり山奥に位置していて、あっという間に土砂降りになったことだ。
走る度に水飛沫を浴びて視界も悪い。
チラッと横を見ればはさも平然としているが、体躯に恵まれた俺と違い、体の細さは一目瞭然。
このままでは風邪をひかせてしまうかもしれない。
「…。」
「ん?何?……ちょ、うわっ…!!」
そう考えるとの腕を引っ張り、己の腕に抱えた。
山の天気は変わりやすい。
少しだけ雨宿りをしてから帰った方がいいだろう。
「雨宿りしてから帰るぜ。このままだと風邪をひく。」
「は?え、ちょ…ちょっと!」
「文句言うなよ。一番近い藤の家にも俺が全速力で走っても1時間はかかっちまう。」
「…それ、は…そう、だけど…」
鬼殺隊一の俊足だと自負している俺がそう言えば腕の中で不満げな表情をしつつ、納得せざるを得ないのだろう。
口を尖らせながらも頷いてくれた彼女だったが、勝気な瞳は俺を捉えて挑戦的に笑った。
「抱える必要はあった?私、そこまで走れますけど?」
「あん?俺が抱えて走った方が速いんだよ。」
「……嫌みな男。はいはい。流石は音柱様ですね〜。」
「そうだ。もっと俺を褒め称えろ。」
だって柱だ。
そこまで速度だって遅くないのは分かっているが、最高速度で走るにはこれが最善なのも間違いはない。
それが分かっているからこそもおとなしく腕の中で小難しい顔をしていても逃げ出すことはしないのだろう。
──ドクンドクン
最初、この鼓動はが俺に抱えられて恥ずかしくて早鐘してると思っていた。
でも、どんどんどんどん強く拍動するそれがではなく、自分の胸の高鳴りだと気付いたのは洞窟を見つけて中に入った時だった。