桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第24章 桜舞い散る君想ふ【宇髄天元】※
ある日、何気なく嫁が三人いることを伝えてもいつもの笑顔で「へぇ、そうなんだ。」と返された。
どことなく素っ気なさを感じた気もしたが、ほんの一瞬のことでその後は少しも表情を変えなかった。
別に隠していたわけではないが、何となく言いそびれていたのだ。
「は結婚願望ねぇの?」
そんなことを平然と聞いてしまったのも女は結婚に憧れを抱くものだと勝手に思っていたからだ。
しかし、その質問には乾いた笑いを出して目尻を下げて首を振る。
「いつ死ぬか分からないから結婚は来世するわ。」
「はぁ?勿体ねぇじゃん。せっかくド派手に美人なんだからよ。」
「本気で人を好きになったら鬼殺隊をしてることがつらくなるだけよ。今は、必要ない。」
がその時どんな心持ちだったかなんて分からない。
だけど、必要ないと言われて何となく距離を感じた俺は冗談めかして失言をしてしまった。
「そうかぁ?何なら俺んとこに嫁に来るか?お前なら大歓迎だぜ!」
もちろん、完全に冗談かどうか聞かれたらそこに邪な気持ちは少なからずあった。
とは腹を割って話せる仲だったし、四人目の嫁になってくれるなら両手を広げて迎えるだろう。
それなのには上げていた口角を下げて無表情で前を向いたまま「結構よ」と言った。
何となく軽口を叩いてしまったのが気に障ったのかもしれないが、それからだ。
が俺と嫁三人と外で会った時、誘いを断るようになったのは。
それまでは嫁がいることを伝えてなかったし、外で出会すこともなかったが、少しだけ溝ができたような気もしていた。
ただ柱合会議などで顔を合わせればいつものように話すし、帰りに連れ立って定食屋に行くのもいつものこと。
関係性は変わらないようであの頃から少しずつ変わっていったのかもしれない。
俺が気付かない内に、は俺の心を侵食してド派手に棲みついていたのだろう。
そしてそれに反して俺はのことをずっと傷つけ続けていたのかもしれない。
後悔とは後から悔いるもの。
今更謝罪しても意味がない。
だけど、戻れるならば…やり直したいと願ってしまう。