桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第24章 桜舞い散る君想ふ【宇髄天元】※
「…それなら仕方ないわね。天元、私と二人でも文句は言わないでよ。」
「言うわけねぇだろ。お館様が仰せならその通りにするさ。」
「ふふ…!良かったです。ではお願いしますね。」
胡蝶の言い分は分かる。
確かに最近の鬼殺隊士の質は悪い。
腰抜けが多くて、すぐに怪我をするし、すぐに死ぬ。
せっかく最終選別をしても意味があったのか分からないほど。
俺たち柱の負担が大きくなるのもまた仕方ないことだ。
胡蝶は怪我人の手当てでそれどころでないと言うことも分かるし、たまたま空いていたのが俺とならば断る理由などない。
俺はと顔を見合わせると『あとで迎えに行くわ。』とだけ言い残してその場を後にした。
せっかく屋敷に招待しようと思っていたが、任務のが優先だ。
嫁達もそれは分かってくれるだろう。
ふと風に乗って舞ってきたのは薄紅色の花弁。
何枚、何十枚と舞い、地面には花弁の絨毯が出来上がっている。
アイツと出会ったのもこんな桜が舞い散る日だった。
凛とした佇まいに桜吹雪が包み込み、まるで天女にでも会ったのかと思ったのはつい最近のことのよう。
しかし、ぼーっと見つめていたら怪訝そうな顔でこちらを見遣り「何か用?」と冷たく言い捨てられた。
正直、あまり女にそんな態度を取られたことがなかった俺は物珍しさからちょっかいをかけだしたのが仲良くなったきっかけだ。
話せば気の良い奴で飾らない竹を割ったような性格。
顔は美人なのにその相反する性質が面白かった。
は親兄妹を全て鬼に殺された天涯孤独の人間だった。
それ故に失うものは何もないと鬼気迫る戦いっぷりで女ながらに俺と同じ速度で柱に上りつめた奴だ。
守られずとも自分で戦えるし、心配せずとも戦果を上げてくる。
柱仲間からの信頼も厚いが、誰とも群れずに一人を好むに唯一絡んでいたのが俺とも言える。
話せば気の良い奴なのに、アイツは最初から死を意識して必要以上に誰かと馴れ合うことはなかった。