桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第23章 3秒先はあなた色【宇髄天元】
すると、考えが纏まったのか宇髄さんが満面の笑みでこちらを見た。
「お前、体調どうよ。」
「寝てスッキリしました!ばっちりです!」
「よし、ならさ。プレゼントくれねぇ?」
「え…?プレゼント、ですか?」
何を言いだしたかと思えば、その内容は"プレゼントをくれ"というもの。食事よりも欲しいものがあるからくれと言うことなのか?
意図がわからず宇髄さんを見つめていると、目の前まで来て屈んでくれた。
「俺さ、今日誕生日なわけ。」
「……えええ?!そ、そうなんですか?!」
彼の言葉で漸くプレゼントの意味を理解して背筋を正す。よりにもよって誕生日の日に部下の尻拭いをさせてしまったことに申し訳なさが募った。
「すみません…!そうとは知らずに手伝わせてしまって…!」
「ンなこたぁいいんだって。だからさ、誕生日プレゼントに夜飯付き合えよ。」
「え、え、え?そんな…彼女さん…とか…いいんですか?怒られません…?」
いくら何でも誕生日当日にこのイケメン宇髄さんだ。彼女とのデートがあるに決まってると思い込んでいた私は誕生日プレゼントの内容に益々首を傾げる。
「あー今、女はいねぇからよ。」
「え?そうなんですか?!三人くらいいるかと思いました。」
「阿呆か。まぁ、落としたい女はいるけどな?」
「へ〜!そうなんですか?!宇髄さんならイチコロですよ!三秒で落ちます!!」
お世辞でなく、本心でそう言えばニヤリと笑った宇髄さんがまた私の頭をぽんぽんと撫でた。
「じゃあ…三秒で落ちてもらおうかねぇ?」
「……へ?…ん?」
「終業まで寝てろよ。また後で迎えにくる。」
「え、あ、はい…」
そう言って部屋を出て行く宇髄さんの背中を見送ると膝に掛かったままだったジャケットから彼の匂いがした。
頼りになる優しい上司の彼に私が三秒で恋に落ちたのはそれから数時間後のこと。
誕生日プレゼントを用意できなかった私に彼が所望したものは"朝まで一緒にいろよ"というもの。
日付が変わるギリギリの10月31日
私と宇髄さんは上司と部下から恋人になった。