桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第23章 3秒先はあなた色【宇髄天元】
ぽんぽんと頭を撫でて、会議の準備のためにオフィスを出て行った宇髄さんを見送ると大急ぎでメールと電話をして、自分も会議に行くため席を立った…筈だった。
しかし、私の視界はぐにゃりと歪んで、体も前のめりに傾いていく。
──倒れる!と思い、咄嗟にデスクに掴まったが、そのまま足に力が入らなくなった私は力無く椅子の座面に頭を押し付けた。
「ちょ、ちょっと…!大丈夫?!」
同僚の声が降ってくるけど、それに頷くことしかできずに言葉は出てこない。
(…やばい…ね、寝そう…)
ここ数日、碌に寝ていなかった私は睡魔が極限まで来ていたため、意識を失うようにそのまま微睡に吸い込まれていく。
意識を手放す瞬間、遠くの方で私を呼ぶ宇髄さんの声が聴こえた気がしたけど、そのまま眠りについてしまった。
◆◆◆
目を覚ますと橙色の光が窓から降り注いでいた。
其処は普段あまり使われない資料室のソファ。
体には誰かのジャケットらしきものが掛かっていて、大きな其れからは嗅いだことのある香りがした。
「お、気がついたか。」
ああ、夕方なのか…とぼんやり考えていると後ろから声をかけられた。振り返った其処にいたのは宇髄さんで、シャツの袖を捲って資料を探していたようだった。
「宇髄さん…!あの、あれ?私…?」
「まぁ、そうなるわな。オフィスでぶっ倒れて眠りこけたんだよ。覚えてねぇ?」
「……あー……」
そう言われれば確かにそんな気がしないでもない。寝落ちしてしまった時のことは朧げでハッキリしないが、宇髄さんの声が聴こえたような気もしたので此処に彼がいることは納得だ。
「…すみません。あんまり覚えてなくて…。あ…!お昼ごはんも…。ご馳走できなくてごめんなさい。」
「だからやめろって。部下に奢られんのは……あー……そうだな…」
話の途中なのに宇髄さんが突然顎に手を置いて考え出してしまったので、首を傾げる。
確かに部下に奢られるのは格好悪いと言っていたような気がするが、元々格好良いのだから少しくらい格好悪くてもトントンだろう。
それに御礼なのだから格好悪いも何もない。