桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第23章 3秒先はあなた色【宇髄天元】
「顔を上げろ」と言う宇髄さんの声に私はおずおずと下げていた頭を上げれば、彼の声がオフィスに響き渡った。
「こ……んの、馬鹿野郎が!!!」
「ひっ、す、すみません…!!申し訳ありません!!」
「そんなボロボロんなって、徹夜までするくらいなら何で俺を頼ってこない?!」
「…え、で、ですが…!宇髄さんは、お忙しい…」
「ほんっっとに馬鹿だなお前は!!クマも酷ぇし、目も真っ赤、ヨロヨロしてるお前よりはよっぽど頭冴え渡ってるわ!半分貸せ。10時までに終わらせるぞ。会議は10時半からに変更する。急げ。」
「は、は、はい!」
目の前にある資料を半分奪い取ると宇髄さんは自分のデスクに向かってパソコンの電源を付けると真剣な表情でタイピングを始めた。
仕事が早くて正確。若くして出世した彼はみんなの憧れの存在。
そんな彼の下で働けるだけでも幸せだな、なんて思っていたのにこうやって親身になって助けてくれることに涙が溢れて来た。
「っ、ひっく…。」
先ほどの孤独と情けなさに耐えかねて出てしまった涙ではない。これは嬉し涙。
宇髄さんの優しさが伝わってきて嬉しくてたまらなかったから。
「…泣くなって。大丈夫だから。」
「っ、は、はい…。」
「…怒鳴って悪かった。昼メシ奢ってやっから頑張れ。」
「い、いや…!私が…ご馳走様します…!」
「部下に奢られんのは格好悪ぃからやめろ。おら、早くやれ。」
言葉は乱暴だけど、ちゃんと私のフォローまでしてくれている彼の上司としての姿勢に感動した。それに報いるため、私は寝不足で働かない頭をフル回転させてパソコンに向き合った。
宇髄さんが私の日常業務を他の人に頼んでくれたおかげで資料に集中できたため、何とか目標の10時少し前に終えることができた。
最後のエンターキーを押すと体から力が抜けて椅子の背もたれに沈み込んだ。
「…お、おわった…。」
「お疲れさん。早く先方にメール送れ。謝罪の電話もしておくんだぞ。こっちのはもうメールしといたから。」
「は、はい!ありがとうございました!」