桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第23章 3秒先はあなた色【宇髄天元】
もう今日は家にだって帰れない。
帰らなければ何とか終わる筈…!
そう思っていたのに、窓の外は明るくなり始めているのに手元にある資料はあと半日くらいはかかりそうだ。
日常業務をしながらだと今日中に終わるかも分からない。
安請け合いしたことでこんなことになった。
格好付けて先輩風吹かせたせいだ。
何とかパソコンに向き合っているが、視界がぼやけてくる。
悔しくて悔しくて涙が溜まってきたから。
「っ、ひっく…。」
時刻は7時半。
あと1時間もすれば出社してくる社員の人たち。
こんな泣き顔で朝の挨拶なんてしたら格好悪い。早く泣き止んで、さっさと仕事を終わらせなければ…
そう思い、手の甲で涙を拭った時、ガチャッとドアが開いた。
「…あれ?お前、もういんの?早くね?」
「う、宇髄、さん…。」
其処にいたのは朝から爽やかなイケメン上司の宇髄天元さん。
朝から彼の顔をマジマジと見られるなんて役得だと思うが、徹夜明けの泣き顔なんていう酷い風貌だったことを忘れていた私は慌てて顔を逸らした。
「お、おはようございます。仕事が残っていたので…。」
「は?そんな仕事立て込んでたのか?見せてみろ。」
「え…?い、いや、大丈夫です!!」
慌ててやっていた仕事を隠そうとするが、パソコンの前に散乱した資料は隠すこともできずに宇髄さんの目に入ってしまう。
それを見た瞬間、訝しげな表情をする彼に居た堪れなくて顔を見ることもできない。
「…この会社はお前の担当じゃねぇよな?何してんの?お前。」
「…あ、えと…その…」
「はっきり言え。場合によっては処罰の対象になるぞ。」
宇髄さんの言葉に背筋が凍りついた私は彼に向き合って「申し訳ありません!!」と大きな声で謝罪をする。
隠し通せない。
何て無様な姿なのだ。格好良く後輩を助けてあげることもできない上に、言い訳もできない。
結果として私は会社に不利益を被ったことに変わりない。
私は頭を下げたまま、ことの次第を全て話した。
震える喉が熱いのは涙を我慢しているから。
唇をかみしめて深呼吸をしようとしても上手く呼吸ができない。