桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第23章 3秒先はあなた色【宇髄天元】
終わらない。
終わらない。
永遠に終わらないんじゃない…?
私は真っ暗なオフィスで自分のデスクだけ電気をつけてパソコンと睨めっこをしている。
連日の残業に加えて、コソッと持ち帰り残業をして朝方まで仕事をすること早三日。
流石に疲れが出てきていた。
残業は残業。
日々の業務もあるため、休み時間も返上して栄養剤やエナジードリンクを浴びるほど飲み、仕事に勤しんでいた。
だが、何も私は仕事が好きなわけではない。
これにはのっぴきならない事情があるのだ。
──遡ること三日前
「えええ?!」
「も、申し訳ありません…!!」
「え、で、、で…?先方は何て…?」
「31日までにやってくれたらいいって言ってくれたんですけど…。私…明日から1週間旅行で有給取っていて…!先輩どうしよう…!」
後輩が泣きついて来たのは退勤間近のこと。
目に涙を溜めて唇を噛み締める彼女に責めたところで仕方ないとは思う。
今日提出予定だったクライアントのプレゼン資料を二週間後だと勘違いしていた後輩は先方の催促の電話で顔面蒼白になっていた。
期日はその日だったのに、先方のご厚意で何とか五日の猶予を貰えたのだが、生憎担当である後輩は有給休暇を取ると言う。
本来ならばそんなのキャンセルして仕事をしろと言うべきところだろう。
しかし、後輩がその旅行をどれほど楽しみにしていたのか知っていた私は先輩風を吹かせて「大丈夫!私がやっておくから!」と大見栄切ったのだ。
そんな安請け合いをして気付いたが、思ったよりも100倍…いや、1000倍大変だということを翌日知ることになった。
日常業務もこなしながら、自分の案件の資料も作るだけでも残業することもあるほどだったのに、後輩の案件までやらなければならないことに絶望してしまう。
自慢ではないが、私は決して仕事が早いわけではない。
妥協が出来なくて、細部までこだわってしまうためにどちらかと言えば遅い。
丁寧だと言われればそうなのだけど、忙しい最中でそのこだわりは足枷だ。