桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第20章 Reincarnation【宇髄天元】
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──もし、願わくば…来世は天元と添い遂げられますように
…天元?誰それ。
──貴方のことを愛してました。長生きしてね。
何その遺言みたいな言葉。
え?私、死んだ?
そんな筈ない。
たかが痴漢で死ぬわけがない。
たかが二日酔いでも死ぬわけがない。
それに痴漢は宇髄さんが…。
宇髄さん…って…?ああ!昨日、初めて話したイケメンだわ。宇髄天元さんって言う…。
そう、宇髄…天元…?
私はその名前を昨日初めて聞いた筈なのに。
何でこんな変な夢を見るんだろう。
女の人の声と共に鮮明に映し出されるのは宇髄さんにそっくりな人。でも、変な服着てるし、変な化粧もしてるし、めちゃくちゃ派手。
昨日も派手なネクタイしてたけど。ちょっと違う意味で派手な出立ち。
でもね、変なの。
その顔を見ただけで酷く泣きたくなるの。
夢のはずなのに目尻から溢れ出た涙の感覚で私は目を開けると、其処にいたのは心配そうにこちらを見下ろしてる宇髄さんだった。
「…!大丈夫か?」
目を開けた瞬間、溜まった涙が耳に垂れていった。朧げでまだ靄がかかっているような頭の中。それは二日酔いのせいだろうか。
昨日初めて話したばかりの人が付き添ってくれているだけなのに暖かくて懐かしい感覚になっていることをどう説明したらいいの。
「宇髄、さん…。此処…は?」
「近くの病院。ぶっ倒れたから運んだ。大丈夫か?頭は打ってねぇけど、念のためCTとか撮ってもらったからよ。目が覚めたら帰っていいってさ。大丈夫そうか?」
さっきの変な服でもない宇髄さんはスーツで派手なネクタイ。
さっきの変な化粧はしてない宇髄さんはただのイケメン。
でも、こちらを見ている優しい眼差しは同じ。
── もし、願わくば…来世は天元と添い遂げられますように
え…?そういうこと?
──貴方のことを愛してました。長生きしてね。
あれは前世ということ?
「あなたは…あの時の天元なの?」
天元なんて呼んだこともないのに、口からさらりと出たことに目の前の彼も驚いていたけど、自分が一番信じられなかった。