桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第20章 Reincarnation【宇髄天元】
こんな満員電車で我慢をしなければいけないことなんて一つしかない。
近くまで来てしまえば2メートル近い身長から見下ろすことで手元はバレバレだ。
の尻を弄っているその手とは反対側の手は自分の股間を触っている不届き者のクソジジイを目視できると、少し強引に人を掻き分けた。
「…おい、ジジイ。騒がれたくなかったら次の駅で降りな。」
そう言うと手を掴み上げて、そのクソジジイを拘束した。
突然無くなった感触に後ろを振り向いたは驚いた顔をしていたけど、何も発せずに彼女の体をドア側に寄せた。
更にその前に自分が陣取ると、少しだけ笑顔を向けてくれる。
やっぱりは笑っている顔が可愛い。
「次の駅でこのおっさん引き渡すから一緒に降りてくれ。いいな?」
「は、はい。ありがとう、ございます。」
こんな男、前世であれば叩っ斬っているところだ。よく我慢したわ。
流石、俺様だ。
◆◆◆
昨晩、あれから飲み足りなくて家中にあった缶チューハイを開けられるだけ開けまくり、気づいたら朝だった。
お酒は飲み慣れてるし、二日酔いなんてほとんどしたことないのに流石に起きた時に転がっている缶の数に顔面蒼白だ。
飲み慣れているとはいえ、バーでたらふく飲んだくせに七缶は開けすぎだ。
頭痛と吐き気に襲われながらも何とかシャワーを浴びると幾分かマシになったので、今日もセクハラに耐えるぞ…!と意気込んでから駅に向かう。
しかし、寝坊したわけではないが、二日酔いで走る気にならずにゆっくり歩いていくといつもより遅い電車に乗る羽目になる。
満員電車が嫌で早い電車に乗っていたのに、二日酔いの上、身動きの取れない車両は気が滅入る。
そして、今日は最寄駅から乗って暫くすると、お尻に嫌な感触がして体が震えた。
会社でも上司にお尻を触られるセクハラに耐えてはいるが、それはほんの数秒のこと。
今回は彼此20秒…まだ続くのだろう。
要するに痴漢だ。
(…最悪だわ…。)