桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第20章 Reincarnation【宇髄天元】
いつも二人で同じ席に肩を寄せ合って座っていれば、在らぬ邪な妄想が頭に広がってしまう。
そういう目で見てしまうと、どことなく距離が近いかもしれない。世の中いろんな恋愛事情がある。口を出すのは野暮というものだ。
私も早く新しい恋人を作ってしまおう。
しかしながら、思えば恋人が出来ても全然長続きしない私。今回はセクハラ上司のせいでフラれたけど、本気の恋愛と言うものをしたことがないように思う。どこか冷めてて、これ以上は好きになれないと一線を引いてしまう。もちろん付き合えばキスもセックスもするのに、''何か違う"と結局は別れてしまうのだ。
その"何か違う"が何なのかは全く分からない。でも、兎に角"何か違う"のだ。
マスターの流れるような動きを見ていると気が紛れる。シュカッと瓶のソーダボトルをあけ、ウイスキーが入ったグラスに突っ込んだバースプーンに添わせてゆっくり注ぐと、バースプーンを氷とグラスの間に添わせ、くるくるとまわし馴染ませていく。
気づいた時には目の前にグラスが置かれていて、和かなマスターが「どうぞ」と言った。
「…ありがとう。はぁ…、また明日も尻を触られると思うと気が重いわ。」
炭酸の泡を見ながら私はそのハイボールを一気に飲み干した。安いハイボールは何杯も飲むためにあるのだ。おかわりをしようと顔を上げるといつの間にか隣には常連さんのうちの一人がこちらを見て微笑んでいた。
「…え、と…?何か?」
「マスター、この子にリベットのハイボールあげて?」
「…へ?!」
"かしこまりました"というマスターの声が遠くに聞こえたけど、それよりもこの人グレンリベット頼んだ?!今日は安いハイボールをたらふく飲みたいのにそれではお財布事情で少ししか飲めないじゃ無いか。