桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
宇髄さんとキスをしてしまってから数週間が経った。冷蔵庫には彼が置いていったお酒がそのまま残っている。
最初は照れ臭かっただけ。
そのキスの意味は分からないけど、宇髄さんとキスをしたことに後悔はなかった。
それなのに時間が経てば経つほど怖くなってしまった。
"気にしているのは私だけなのではないか?"って。
宇髄さんは凄く格好いい。
私なんか遊びの女の一人かもしれない。
あのキスに大した意味なんかないのかもしれないと考え始めると怖くなって会えなくなってしまったのだ。
同じ電車に乗っていたのにわざと一本早いのに乗るようになった。
帰りは鉢合わせないように足速に帰ってきた。
そうして会わないように努力していたのに突然宇髄さんが訪ねてきた時は咄嗟に居留守を使ってしまった。
郵便受けに入っていたメモに書かれていたのは彼の連絡先。
また私と遊びたくなったのだろうか?
でも、生憎私は遊び向きの女じゃないと自分でもわかっている。
宇髄さんとキスをしたら彼女にして欲しくなってしまったし、これから先セックスをしてしまったら大勢の中の一人では嫌になる。
私は欲深い女なのだ。
会えば宇髄さんの全てが欲しくなってしまう。
だから駅で見かけても必死で身を隠してきた。
「…あーあ…何してんだろ…」
まろび出た言葉は後悔の言葉。
日傘を忘れてラッキーと思っていた頃に戻りたい。みてるだけで"目の保養"程度の想いの時の方が諦めが早くついた。
もう宇髄さんと言う底なし沼に嵌ってしまったら暫く抜け出すことは難しいのだから。
もらったメモをお守りのように持ち歩くことになって数日。
季節は秋も深まった頃なのに急に25度を超す夏日が続いていた。今日もまた日差しが強いことを前日の夜の天気予報で確認していた私は仕舞い込んでいた日傘を出した。
もう今シーズンは御目見しないと思っていたそれを差すとあの時より20分も早く駅までの道を歩いていく。