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桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】

第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19





仕事が終わるとダッシュでアイツの部屋に向かった。たった一回しか行ったことないのに昨日のことのように道を覚えている。


あの花火大会の日、人混みに紛れて見失わないようにアイツの手を繋いでいた。振り払われなかった手に俺は安心していたのかもしれない。

女に困ったことはない。
だけど、こんなに自ら欲したこともない。
どうしたらいいか分からなくて、うっかり選択を誤ったのは間違いない。


見覚えのあるマンションまで辿り着くと迷うことなく、オートロックを解除してもらうため部屋番号を入力した。



──ピンポーン


無機質な機械音だけがエントランスに響き渡るが誰も出ない。
時間は夜の19時。
流石に帰っている頃だと思うのだが、何回押してもアイツの声は聴こえてこない。


「…いないのか?」
 

いないのかもしれない。
だけど…居留守を使われてるかもしれない。

あれから数週間経っている。今更何しに来たのだと思われても仕方ない。あっちからしたら告白もされずにキスされて、何の音沙汰もなく時が過ぎているのだ。
もうあんなキスのことなんて忘れたいのかもしれない。


(でも…それは俺が無理だからよ。悪ぃな。)


俺はエントランス横にある郵便受けに向かうと鞄から手帳を取り出した。
使っていない真っ白なページを一枚破り取ると連絡先を書いて其処に入れる。


"連絡待ってる"という言葉は通じるだろうか。
このSNSの時代に直筆のメモなんて古典的だが、アイツとの接点は駅で会うことだけ。
うっかり電話番号も聞きそびれて知らないのだから仕方ない。

俺は仕方なく踵を返すと帰路についた。

しかし、メモを入れてから一日…また一日…と過ぎていく中で俺のスマホに新規の通知が来ることはない。
毎日スマホを見る時間が増えていくことで勝手に想いだけが募っていった。



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