桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
「え…?まさか空想…?」
「空想じゃねぇわ!家にも行ったし、ガチでキスもしちまった。」
「うわぁ…、連絡先も知らない女の人の家に押しかけてキスしたんですか…?」
「おおおい!語弊があるぞ!連絡先だけ知らないだけで何度も話したことあるし、家に誘ったのはアイツの方だからな!」
家に誘ってきたのはアイツだから好意を持ってくれていると思い込んでいたけど、ここまで会えないと全てが勘違いだったのかもしれないと自信がなくなってきたのだ。
「意外ですね〜。宇髄さんってもっと男らしい人かと思ったけど意外に女々しいんですね。」
だから善逸のその言葉は的を得ているのに目を見開き、眉間に皺を寄せる。
「はぁ?!誰が女々しいだと?!」
「こんなところで悩んでいるより直接聞きに行けばいいじゃないですか。家に誘ったのがその人からなら待ってるのかもしれませんよ。宇髄さんがまた来てくれるのを。」
「…ストーカー扱いされたらどうすんだよ。」
「だーかーら!部屋を教えてくれたのがその人からならそんなことならないですって。宇髄さんのキスの答えを待ってるんじゃないですか?」
呆れたような表情の善逸に何も言い返すことはできない。その代わりに椅子の背もたれに背をつけると天井を見上げた。
(…キスの答え、か。)
そんなモン考えるまでもない。
答えなんて決まりきっている。だけど言わなければ分からない。
会えなければ会いに行けばよかった。
この数週間、俺だけでなくアイツの方が俺に避けられてると思っていたのならば?
(…ド派手に情けねぇ…!!)
本日最大のため息を吐き切ると善逸のデスクまで向かい、頭を鷲掴みにした。
「イデデデデデ!!」
「礼を言うぜ…善逸。」
「れ、れ、礼を言う態度じゃな…イデデデ!!」
先輩に対する口の聞き方の指導は程々に、その日俺は退勤すると猛ダッシュで会社を後にしたのだった。
キスの答えを伝えるために。
向かう先はたった一つ。
花火よりも艶やかだったアイツのところ。