桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第3章 ホワイトレディ【トラファルガー・ロー】※
その日はオペが長引いて、行きつけのバーで軽く飲んで帰ろうと思っていたら週末で思ったよりも混んでいた。
大人しそうな女が1人で飲んでいたので、そこなら静かに飲めるかと思って座ると突然顔を上げたその女が泣いていて、思わずその綺麗な涙に釘付けになった。
よく見たら、どこかで見たことのある顔。
「先生…」と呟かれたその一言で病院の奴だと言うことは分かった。
ああ、思い出した。
他のDr.が美人だと騒いでいた看護師だ。
一度こちらを見た後はまた下を向いてしまったが、止めどなく溢れていた涙を見て席につくとマスターがいつもの酒を出してくれた。
彼女の前にはホワイトレディ。
こんな度数の高い酒を飲むから感傷的になるんだろうが。
「…先生は、よくここ来るんですか…?」
やっと泣き止んだようでおずおずと話しかけてきた。
自分が泣かせてみたいで、飲んだらとっとと帰ろうと思っていたのに、話しかけられて何故か無視して帰る気にもなれず仕方なく返事をした。
「まぁ、たまにな。」
「そうですか…。私も、よく来るんです。ここ、お酒美味しいですよね。」
通う理由が同じだったので"ああ"とだけ返事をした。
「あの、こっち空いたのでずれましょうか?彼女さんとかに誤解されたりしたら大変ですよね?」
遠慮がちに隣の席が空いたので自分が1つズレると申し出た彼女だが、何だか今更どうでもよかったし、泣き止んだなら隣にいてもらっても構わなかった。
「別にいい。」
自分の返事が意外だったのか、キョトンとした顔をしていた。
目の前のホワイトレディを飲み干すと、何を飲んでるのかと聞かれたので"ジントニックだ"と答えると"同じもの下さい"と言い、微笑んだ。
「さん、今日飲み過ぎですからね。
これで最後にしてくださいよ。」
「明日、夜勤だから大丈夫ですよー。
先生は?」
「…当直だ。」
「なら飲み明かしましょう!!」
急に空元気なんだからよく分からないが、饒舌になり話出したので、相槌をたまに打ちながら彼女の話を聞いてやった。
要するに男に振られてヤケ酒らしい。