桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
「…うーん……。」
「今度は何ですか…?」
間髪入れずに反応してくれる善逸は調子のいい後輩だが、可愛がってもいるし意外にも的を得た答えをくれるかもしれない。
そう思った俺は頬杖をつきながらまじまじと善逸を見遣る。
「…な、なんですか?!お、怒ったんですか?!」
「なぁ、お前ならさ…付き合ってもない女に酒の力でうっかりキスしたらどうする?」
「………は?……またモテ自慢ですか?!はいはい。モテる男は大変ですねぇーー!!」
「ちげぇって。確かに俺はド派手にモテ男だけどよ。好きな女に告白する前にぶちかましちまったわけよ。」
恥ずかしげもなくそう言ってみれば見る見るうちに真っ赤になった顔を手で覆う善逸に「失敗だったかもしれない」と感じるのは仕方ない。
コイツにだってそう言う経験はある筈だが、初心な善逸の反応に顔を引き攣らせた。
しかし、数秒後に顔を上げた善逸が意外にも会話を続けてきたので話を聞くことにした。
「何ですか…?その甘酸っぱいシチュは…!羨ましい…!!」
「…甘酸っぱい…かねぇ?」
「そうじゃないですか!!そこまで来たらもう手っ取り早く告白しちゃった方がいいですよ!」
「そうなんだけどよ…。連絡先知らねぇし、ここ数週間避けられてんのか会えねぇんだわ。」
そう。俺の1番の悩みの種はそこだった。
あれ以来、同じ電車の筈なのに彼女と駅で鉢合わせることはなくなった。
駅に向かう通勤経路にも見かけない。
ホームを見渡してみてもいない。
数日ならば会えないことは今までもあった。
俺たちの逢瀬は偶然の産物から生まれたものでしか無かったから。
家を知っているのだから会いに行けば行ける。
だけど、避けられているのだとすれば…?
あのキスは拒否されているわけではないと思っていたが、本当は嫌だったならば…?
そう考えてしまうと、不用意に家に行けばストーカー扱いされるかもしれない。
モテ街道まっしぐらだった俺がここまで気を揉むのは生まれて初めてのことで、正直どうしたらいいのか分からなくなっていたのだ。